Best Friends
□02
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あの後パイナップル男子は逃げるように去っていった。
残された私も何事もなかったかのようにその場を去り、たった今テニス部部室に到着したところや。
よっしゃ、入るで…!
【庭球部】と書かれた大きな門の前で、大きく息を吸い込む。
『ひらけーゴマ!!』
声に反応したのか、門がゆっくりと開いていく。
どういう仕組みか知らんけど
『(今日からここに通うんや…!)』
開かれた門のその奥に見えたのは。
『(テニスコート…と)』
キラリとした物体がふたつ、私の目を捉える。
『ドラ○ンボールがふたつ…!?』
「「誰かドラゴ○ボールや」」
ビシビシィッと突っ込まれたかと思い、顔を上げればそこにおったのは…
「あら〜ん!?めっちゃ可愛い女の子やないの〜!ロックオン☆」
坊主で眼鏡なオカマさんと…
「ドラゴンボー○は八つ、ワシの波動球の方が何倍も上や」
なんか…お坊さん。
『あれ、ここってテニス部ちゃうかったっけ…』
なんでお坊さんとかおんねん。
で、出直して来「よーし全員揃ったなー」
振り返ると上級生らしき人が数名おった。
「ようこそ、テニス部へ!」
***
「1年の明石家ししゃもです!テニスは未経験で…」
「1年佐藤建です、テニス経験は…」
顧問の先生と上級生の挨拶が終わり、今は新入生の挨拶タイムや。
ほとんどの人の名前覚えてへんけど
いや、こんな機会作ってもろても普通は今すぐ覚えるなんて無理やんなぁ。
その人と会話して初めて覚えることができるっちゅーか。
「ほな、ラスト!」
そんな声が聞こえて顔を上げる。
すると部活ブース案内の日に入部手続きをしてくれた"ハラテツ"と呼ばれた上級生が歩いて来た。
「マネージャー希望やったな。ほれ、自己紹介しぃや!」
とん、と背中を押され少し前に出ると、みんなの視線を浴びる。
マネージャー希望とか言うたっけ、なんて思いつつ私は口を開いた。
『1年ゆでたまごです!いろいろあってここで青春時代を過ごすことになりました、紅一点頑張ります、よろしくお願いします!』
「待ってました〜!」
「えぇぞえぇぞ!」
「って、ここは居酒屋か!」
挨拶してからぺこりと頭を下げるとみんなからツッコミと笑いと拍手を貰った。
「…ほな自己紹介も済んだことやし、それぞれのやること説明していくでー!」
「1年ラケット持ってこっち来てー!」
「2年こっちやでー」
3年の先輩の誘導に従ってぞろぞろと移動し始めるみんなを見て私は一人焦り始める。
『(マネージャー忘れられとる…!?)』
いや、でも今自己紹介したとこやし。
あれちょっと待てよ、でもさっきの先輩方の紹介の時マネージャーの人おらんかったような…
『は、ハラテツ先輩っ!』
「んぉっ!?」
2年グループに向かうハラテツ先輩のジャージを思いっ切り引っ張り、足を止めさせる。
それはもう、ちぎれそうなくらい。
「いやいやたまごちゃん、そない引っ張ったら可愛気あらへんで」
『余計なお世話です』
スッと手を離すとこちらに向き直るハラテツ先輩。
『あの、マネージャーはどないすればえぇですか?』
「え?………あぁ…」
ちょっと間が気になるけど、目線で先を促す。
「適当や」
『その"適当"が分からんのですけど』
えー、と言いながらハラテツ先輩は頭を後ろ手で掻く。
「まぁ…何かしら見つけ出して、やるしかあらへんやろ!なんとかなるって!」
背中をバンバンと叩かれ、ほな!と2年のグループへと去っていったハラテツ先輩。
『に、逃げられた…』
私は一人、部室の方へと足を向けた。
そんな私を眺める人物がおったとは知らずに。