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ピロロン ピロロ〜ン



「いらっしゃいませ〜」

なんてこった。

忍足くんはともかく、千夏さんも…

『二人ともおらへん…!!』

どないしよ…

二人がおらんことには、お見舞い品を渡すことができへん。

そんなん嫌や、頑張って作ったんに!

光くんには謝りたい。

忍足くんには、ほ、褒めてもらいたい。

その時。

私の中に何か、新しい感情が芽生えた。

食べてほしい。

褒めてほしい。

『(何としてでも食べさせんと…!)』

でも、どないしよ。

うーんと頭を捻っていたその時。

「たまごちゃん?」

女神が降臨した。

『千夏さぁぁぁあぁあん!!』

なんということでしょう!

絶妙なタイミングで女神が現れたではありませんか!

千夏さんに思いっ切り飛び付くと、不思議そうな顔をされた。

「どないしたん、たまごちゃん。また買い物来てくれたん?」

『買い食いしたいのは山々やねんけど、今日は用事があってな…』

私がそう言うと千夏さんは、何の用かと聞いてくれる。

『忍足くんの連絡先…教えてくれへんかな?』

知ってたらでえぇんやけど、と小声で付け足す。

すると千夏さんは笑顔で答えた。

「おん、えぇよ!」

あ、やっぱり知ってるんや。

さすがバイト仲間!

てか、忍足くんって中学生やんな。

なんでバイトしてるんやろ。

なんでバイトでけるんやろ。

ほら、普通バイトでけるようになるのって高校生からやん?

まぁ考えたところで答えは分からんけど。

「はい、たまごちゃんのケータイに送っといたから!」

『おおきに、千夏さん!』

わー、感謝してもしきれへんわ。

このタイミングやし、連絡先も知っとるし、ほんま有難い。

嫉妬とかいう気持ちよりも有り難い気持ちの方が断然でっかい。

「慌てた顔しとったけど、今から会いに行くん?」

え、そないに慌てた顔しとったっけ、私!?

『そのつもりやねんけど…えぇかな、いきなり行ったりして』

「いけると思うで!今やったら学校で練習しとるんちゃうかな?」

千夏さんはバイトのシフトも理解してるやろうから、たぶん言うてることは合ってるんやろうな。

千夏さんに会えてほんまによかったわぁ。

この流れでいけば、光くんも学校におるやろうし。

『おおきに、千夏さん!今から行ってみるわ!』

私はさっそく自転車に跨る。

「ウチ今からバイトやからついていかれへんけど…いってらっしゃい!気ぃつけるんやで!」

『はーい!』

私は千夏さんに手を振り、四天宝寺まで自転車を進めた。
 
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