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「告白したねん」
『ちょっと待って』
「告白したんやけどな、俺な」
『待って待って』
「あのな」
さっきからこれの繰り返しや。
待って、頭がパニックや。
昨日忍足くんは千夏さんに、光くんは私に告白したと。
え、つまりは何。
光くん→私→忍足くん→千夏さん
っていう恋愛関係図が出来上がってたと!
なるほどね!
なんやねんこの漫画みたいな展開!
ややこしいねん!
「ゆでさん」
やとしてもなんでこのタイミングで言うねん!
タイミング悪すぎやろ!
「たまご」
『!?』
突然名前呼びをされて、驚いた私は固まる。
「最後まで聞いてくれへんか?」
『お、おん…堪忍な』
私は素直に謝る。
でも、これって拷問ちゃうかな。
好きな人の好きな人についての話をされるってことやんな。
あれ、泣きそう。
でもそんな私にはお構いなしに、忍足くんは続きを話し始めた。
「俺は千夏さんに告白したんや。でもな…フラれてん」
『…え?フラれ…?』
ぎょっとして顔を上げる。
「"謙也くんが見てるんは、私やなくてたまごちゃんやろ"って言われてもうてな。ほんで俺、考え直してん」
『…』
「確かにゆでさんとおったらおもろいし飽きひんし…何より俺、光に妬いとった」
『…』
「そんな時"あいつ"が現れて、ゆでさんを攫っていこうとするから…血の気が引いた。ほんまに怖かったし、本気でボールぶつけた」
視界が滲んでくるのが分かる。
あぁもう、私また泣くんかな。
「俺はゆでさんが好きみたいやわ」
その言葉を聞いた瞬間、ぶわっと涙が溢れ出した。
「え!?ちょ、そ、そんな泣くほど嫌やったん!?」
『ちゃうわ!あほ!』
泣きながらも悪態はつけるのでまだ自分の中に余裕があるらしい。
『自分の好きな人も分からんどあほ!』
「うっ…それは…か、堪忍…」
頭を撫でようと、私に伸ばしてくれとった忍足くんの手が止まる。
『好きやと思ってた人に背中押されるどあほ!』
「す…すんません…」
忍足くんは顔を引き攣らせながら謝る。
『好きとか言った人泣かせるどあほ〜!』
わーんと大声をあげれば、しーっ!と静かにするように注意される。
誰のせいで泣かされた思っとんねんほんまに!
「なぁ、聞いてえぇか?」
『なんやねん…』
ゴシゴシと服の袖で涙を拭ってくれる忍足くん。
ちょっと痛い。
「さっき何て言おうとしたん?」
『え、さっき?』
「俺が話遮る前!」
『………あぁ…』
私から告白しようとしたんやったな。
いや、なんかもう忘れたい。
「なぁ、何て言おうとしたん?」
何度も聞いてくる忍足くん。
私は観念して、言うことにした。
だって忍足くんも似たようなこと言うてくれてんから、おあいこ…やんな?
『初めて会った時から、忍足くんのこと好きやってん』
「おん」
少しニヤニヤと意地悪そうな表情で見つめてくる忍足くん。
なんやねんこの!
…っコノヤロー!(悪口が思い浮かばなかった)
『私とつ、付き合ってください』
噛んでもうたし!
どれもこれも忍足くんのせいや。
そうや、そうしよう。
「何勝手に人のせいにしとんねん」
あれ、私今声に出してたっけ…
まぁえぇわ、もうそない細かいこと気にせんとこ。
「俺ヘタレやけどえぇん?」
『受け止めるわ』
「テニスばっかしとるけどえぇん?」
『応援するわ』
「自分の好きな人分からんなるけどえぇん?」
『いやそこは良くないで』
「調子乗ったわ堪忍してぇな」
少し間を置いて、私は広角を釣り上げて笑う。
『分からせたるわ』
そこまで言うて、私たちは笑い合った。