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『あー楽しかったぁ!』

只今、午後7時過ぎ。

あれから、いろんな乗り物に乗りまくった。

散々乗って夜ご飯も食べて、お土産も買うて、今は観覧車に乗ってます。

…光くんと二人で。

まぁ今乗ったばっかやねんけどな、うん。

『今日は遊びまくったなぁ…もう動かれへんけど、これさえあったら満足やわ』

そう言う私の視線の先にあるんは、自分へのお土産として購入した、ハンマー

期間限定イベントのモンスターバスターの武器にも使われとるハンマーや。

武器言うてもハンマーを型どったただのおもちゃやけど、これが結構重い!

「そんなん買うてるやつ初めて見ましたわ」

『なんや?嫉妬か?ヤキモチか?お?』

は?

『そんな睨まんでもちゃんと二本買うてあるで、光くんに貸す用に。ほら、これ一本貸したるわ』

突き落としますよ

こわいこわい!

ちょっとそれはシャレにならんぞ!

『はー…でも今日は使えなさそうやな、体力的にしんどい!』

「体力あらへんな…」

『失礼やな!でも既に筋肉痛やわ…こっちならいけるんやけど』

「それは…」

光くんの視線の先には私の手元にある、ハリーボッターの杖。

なんか興奮して買ってもうたわ。

魔法の杖とかかっこえぇやん?

「大体、アンタはしゃぎすぎやってん」

そう言って、光くんは私の足を蹴ってきた。

『痛っ!めっちゃ痛い!やめてや!』

「あほやな」

筋肉痛の話題で盛り上がっていると、頂上に近いとこまできた。

『高〜!』

「すげ…」

そう言って、光くんは窓の外を見る。

『…今日、楽しかった?』

私も窓の外を見る。

「まぁまぁっすわ」

『何それ…あー、足痛い』

「我慢しぃや」

『観覧車降りたら、おんぶしてな』

「は?きっしょ」

『何で!?』

「あ、謙也さんが見える」

『話逸らすな!』

そう言いつつも私は、忍足くんと千夏さんのゴンドラの方を見る。

忍足くんと千夏さんは、私たちより一つ後のゴンドラに乗った。

せやから、ここから少しだけ。

ほんの少―――しだけ見えとる。

『…』

意外と遠く感じるなぁ…。

『…』

楽しそうやな…

また、モヤモヤしてきた。

「…たまごさん?」

『あ、おん…何?』

向かい側に座ってる光くんが、じっとこっちを見据える。

「…謙也さんが気になるん?」

『…はい?』

思わず聞き返す。

「せやから、そないに謙也さんが好きなんかって」

『え!?好き?私が…忍足くんを?』

何言い出すねん、この子は!

え、バレとる?

私が忍足くんを好きなことバレとる?

「バレバレやし」

『心読むな!』

「…会ってまだそないに時間経ってへん俺でも分かるわ」

『うそぉ…』

バレとったとか…パンナコッタ!

あ、間違えた。

なんてこった!

テンションがうざい

『やって…』

口を開くと、今度は光くんがそっぽを見ながら口を開いた。

「アンタのこと見とったら、すぐ分かるわ」

『…あー…うーん…なんか堪忍な…』

「………今ので伝われへんとか…」

なんか、げんなりされた。

すると光くんはふと顔を上げる。

「たまごさん」

『ぇ…はい?』

じっとみつめられる。

…なんか照れるな。

そして光くんは、一呼吸する。

「俺たまごさんのこと、好きっすわ」

『え』

思考が停止する。

「なぁ」

『は、はいっ』

声が上擦ってしまう。

てか、この状況ってあれやんな。

漫画でよくあるあれやん。

観覧車で二人きり。

もうすぐ頂上…。

「せやから…」

『ひっ…光くん、私は…』

「とりあえずそこ座れや」

『…はい?』

そう言って光が指差したのは…床。

えっ、ここって座るとこちゃうよな。

あれ、私…間違ってるかな。

うん、間違ってへんよな…たぶん。

いや、たぶんっていうか絶対。

「何してんねん、えぇからはよ座れや」

『え、あっはい…?』

わけも分からず床に膝をつく。

私が光くんに、跪く形や。

「…ムカつくねん」

『え?』

「ムカつくねん、どいつもこいつも」

え、何?

いきなり愚痴ですか!

「行動とか」

『…?』

行動?

「あの千夏っちゅー奴も、謙也さんも」

何やねん…

いきなり人の悪口?

しかも私の友達と、好きな人の。

『…っ悪口は「アンタも」…へっ?』

…私?

「分かりやすすぎやし」

『…何のことやねん』

「…」

光くんはしばらく沈黙した後

「ムカつく」

『…え?』

抱き寄せてきた。

「ムカつくけど、」

『…』

「俺は謙也さんを好きなたまごさんが好きや」
 
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