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「たまご!はよ来て!」

所変わって、ここは梅田第二テニスコート。

愛華が手を振ってるのが見える。

『どないしたん!何があったん!?』

愛華の近くに、自転車を止める。

「こっち!」

手を引かれる。

そして、愛華につられて走る。



パコーン



『え?』



パコーン



「はぁ…はぁ…」

『ここって…』



パコーン



連れて来られた場所では

んんーっ絶頂!

「「「キャー!!」」」

白石くんがテニスをしとった。

「うきゃー!!かっこえぇ!」

愛華のテンションは上がりまくりや。

『…』

「"絶頂"やって!もうやばいって〜!」

『…どういうことやねん』

「謎の包帯男っかっこよすぎ!もうウチが絶頂!!ハァ…ハァ…」

まったく話を聞いてくれへん愛華に対して

『何ですかこれはぁあああ!!』

思わずシャウトする私。

「何って…謎のイケメンテニス集団やで」

『ちゃうわ!せやから、何で白石くんがここにっ…』

ふと見た視線の先には

「…〜……!」

「…、…」

忍足くんがおった。

大仏みたいな人と一緒に。

「あの人白石って言うん!?ハァハァ…てか、どういう関係なんよ!何で名前知ってんのん!?」

『あ、おっ…忍足くん…!』

愛華をスルーしてベンチに座ってる忍足くんを見る。

「え?なに、あの人"忍足"って言うん?めっちゃかっこえぇやん!」

愛華が何か言っとったけど、私には聞こえてへんかった。

その場でフェンスにしがみついて忍足くんの方を見つめる。

すると、ふとこちらを向いた忍足くんと目が合った。

その瞬間忍足くんは驚いた顔をしたものの、すぐに笑顔になり手を振ってくれた。

私は急いで、忍足くんのいる方のベンチに駆け出す。

「あったまご、ちょっ…」

「ふぅ…疲れたわぁ」

白石様ぁあああ!!

「!?」

愛華はこの際放置や。

『忍足くんっ!』

「ゆでさん!」

忍足くんはベンチに座ったまま身体をこちらに向けている。

「どないしたん?何でここに?」

『友達に呼ばれて…忍足くんは試合?』

「せやで!次、俺シングルスなんやけど…これ勝ったら四天宝寺、勝ちやねん!」

『そうなん!?すごいなぁ!』

「せやろ!これが俺ら四天宝寺中や!」

そう言うてポーズを決める忍足くんになんだか胸が熱くなるのを感じた。

「謙也くん、そろそろ試合やで〜…って、たまごちゃん!?」

『えっ…千夏さん!?』

声のした方を見れば、そこには千夏さんが立っとった。

千夏さんが…何でここに?

「あ、実はウチ、謙也くんに呼ばれて応援に来たんよ!」

え。

思考が止まる。

「なっ…そ、それはそのっ…、とりあえずっ試合終わらせてきますんで!」

すたすたとコートに入る忍足くん。

『…』

あれ、何やろこれ。

めっちゃモヤモヤする。

忍足くんが、千夏さんを呼んだ?

…試合してる姿、見せるために…?

『…』



パコーン



ラリーの音が耳に入る。

その方向を見ると、忍足くんが真剣な表情でボールを追いかけとった。

『…』

「たまごちゃん…?」

あの表情を見てたら胸の奥があったかくなる。

…あぁそっか、わかった。

今、全部気付いたわ。

初めて忍足くんに会ったときのドキドキも。

さっきのモヤモヤも。

このあったかい気持ちも。

私は、忍足くんが好きなんや。
 
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