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店を出ると、光くんは自転車に跨がって今にも出発しそうな体制やった。

『ちょい!待ってや!』

光くんの制服を掴む。

「…何スか?」

『何って…置いていくんかい!乗せてってや!』

「なんで俺やねん…いやっスわ」

『まぁそう言わんと…よっと』

「勝手に乗んなや」

後部席に座ると、腹に肘打ちされた。

『痛!めっちゃ入った!今めっちゃ…!』

「肘打ちされるん嫌やろ、下りぃや」

『私…怪我人やから!光くん、責任取って送ってな!』

「はぁ?どうしても送らせる気ぃかこの人」

『大正解!ほら出発!』

「………ぜんざい3つな」

そう言いながら、光くんは自転車を漕ぎ始めた。

ぜんざい3つ分の愛をあげる

きっしょ

きしょいとか言われたけど、なんかもう慣れてきたわ。

『あ、せや。光くん今からヒマ?』

「……………ヒマっスけど」

『何、今の間!』

「いや…変なことされたら嫌やから」

普通これ性別逆ちゃう?

「ヒマやったら何なん?」

『ここずっと左に行ったとこの丘の上行こーや!』

「は?」

『おばちゃんが言うとったねん!そこオススメやからって』

「そこっt『はよ行こ!な、行きたくてしゃあないねん!』…」

どんなとこやろか。

丘の上やから昼寝とかできるんやろなぁ。

今日は天気えぇし、ぐっすり寝れたりして…!

そんなことを考えとったら、はよ行ってみたくなった。

「…知らんで」

『ん〜?』

光くんの腰に腕をまわす。

「…っ」

『ん?』

「鳥肌立ったやんけ!やめろや」

『そこまで!?』

光くんは自転車を漕ぎ始めた。



***



そんな感じで話しとったらいつの間にか丘の上に着いとった。

いっぱい草や木が生えとってベンチがいっぱいある。

遊具があらへん、めっちゃ広い公園っていうか。

『とりあえず座ろうや!』

「…」

私がベンチに腰掛けると光くんも隣に腰掛ける。

『他にも人来てるんやな…まぁしゃーないか!』

「…」

『光くん…?』

ここに来てからずっと黙ってる光くん。

『光くん、どないしたn「誘っとるん?」は…?』

え、何て?

"誘っとるん"?

"さそっとるん"?

"サソットルン"?

サソットルンってなぁに、おいしいの?

『ごめん、何て?』

「…誘っとるん?」

『あ、ほんま堪忍。何て?』

「せやから…誘っとるんかって」

『今日耳の調子悪いねん、もっかい言っ「何回言わすんじゃボケ」』

いや、そりゃ何回も聞き返したくなるやろ。

『意味分からんねんけど…』

「とぼけなや」

『は?』

光くんの顔が近付いてくる。

『…、』

夕方の公園で、男の子が顔を近付けてくる。

こんな乙女ゲームみたいなシチュエーションでされることって言うたら、私やって分かるわ。

そないに鈍感やないし。

こんな時ってどうすれば…?

いつの間にか、光くんの腕が私の腰にまわされとった。

更に、顎に手を添えられる。

それで、唇が触れそうになった時。

「…くくっ」

光くんが突然笑い出した。

『…はぇ?』

腕も離される。

「あんた絶対あほやろ」

『は!?』

「今の雰囲気やったら普通、目ぇ閉じるやろ…それでも女っすか」

『はぁあ?失礼なやっちゃな!何なん!?』

「何って…ここがどこか分かっとるん?」

『いくら私でもそこまであほやないで!昼寝に最適そうな場所や

そこまであほやん

『あほちゃうわ!光くんさっきから何言うとるん?』

「…ここでキスしたら、ずっと恋人同士でおれるって伝説知っとるやろ?」

え。

一瞬、思考が止まる。

『………でぇぇぇ!!?そ、そうなん!?』

「あほや…」

『…って、光くん、ほんならさっき…その、ちゅーしようと…した…やん!何で…』

「アンタが誘ったから」

『はい?私、誘ってなんか…』

「うそやろ。思いっ切り誘っとったわ」

そこで、自分の行動や発言を思い返してみる。

"ここずっと左に行ったとこの丘の上行こーや!"

゙行こうや、なぁ!はよ行きたくてしゃあないねん"

そこで、確か光の腰に腕をまわしたっけ。

"他にも人来てるんやな…まぁしゃーないか!"

『…ぬぉおおぅ!!』

「何ちゅー声出すねん」

『あの…そんなつもりはなかったっていうか…』

「まぁ噂知らんかったみたいやし、今回だけ許したるわ」

必死な私に光くんはため息をつく。

『お、おおきに!』

「奢り強制な」

『え、いやy゙ぐぅ〜…゙

「『…』」

「…帰ります?」

『おん、早めにお願い』

お腹鳴ってしもた。
 
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