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ピッ



気を取り直して。

忍足くんは新しいゴリゴリちゃんを手に持っとる。

『あ、おでんある?』

「こんな暑い日ぃにおでん食べんの!?」

『お母さんに言われた時の私と全くおんなじ反応やわ』

「オカンに言われたんか…待っとって、奥にあるかなぁ…」

ぶつぶつ言いながら、奥に入っていった。

『…』

同い年やったんやなぁ…

なんか、ドキドキする。

「あったでおでん!具ぅ何にするん?」

『…』

「おーい?」

『あっ…おん、堪忍な、何?』

「具ぅ何〜?」

何にしよかな。

お母さんに選ぶの任されたし…

『とりあえず…たまご、糸こんにゃく、だいこん、もちきんちゃく、はんぺん!』

「はいよ〜!てか、おでんのこんにゃくは普通、三角こんにゃくやろ!」

『なんでやねん!おでん言うたら糸こんにゃくやろ!』

「いや、三角こんにゃくって決まってんねん!」

『決めるな!』

「入れとくからな〜」

オイ

私のツッコミも虚しく、次々に具を乗せていく忍足くん。

「あ。あと、おでんの華となるものを忘れてんで!」

忍足くんは指を立ててこっちに向ける。

ビシッと効果音がつきそうや。

『何やねん、"おでんの華"って…』

おでんのどこにも華々しさなんかあらへんわ。

「すじ肉や!これ絶対!おでんにすじ肉は必要不可欠!法律になればいいのに

なってたまるか

「とりあえずすじ肉入れとくからな!あと、からしも入れとくわ」

さっきからいろいろ入れすぎやろ

「えぇねんえぇねん」

そう言ってレジ台の上に、アイスやらなんやらを詰めた袋をおく。

『おおきに!なんぼ?』

さいふを出すためにポケットに手を突っ込みながら言う。

「いや、俺が払っとくわ!アイスぶつけてもーたし…」

『え、うそやん。えぇの?』

「おぅ!」

『ラッキー!ほな、頼むわ!』

「これくらいはせんとな…」

『気にせんでえぇで!…ほな!レジ番、頑張りぃや!』

「おん!おおきに!気ぃ付けて帰りや!変質者とかおったら叫んで逃げぇや?」

『わ、わかったから!ほなね!』

私ら、初対面やんな?

帰り道の心配してくれるとか、どんなけ優しいねん…



ぴろろん ぴろろ〜ん



『あっつ…』

外に出たら、熱気でいっぱいやった。

とりあえず自転車に跨がる。

『はよ帰ろっと』

私は体中の熱を冷ますために、速めに自転車を漕いだ。



(夏のおでんフェアの残りもん、あってよかったわ)
 
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