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ピッピッピッ



…めっちゃ速い。



ピッピッピッ



何やこれ。

めっちゃ速い。

ピッてすんのめっちゃ速い!

ゴリゴリちゃんが見えへん…。

その店員さんが、最後のゴリゴリちゃんを取った瞬間。

「あ」

『え?…ぶふぉっ

手が滑ったのだろう。

ゴリゴリちゃんが私の顔面に直撃した。

いたぁあああ!!ゴリゴリちゃんめっちゃ痛い!!

私は両手で顔を覆い、しゃがみ込む。

ここがコンビニやってことさえ忘れて大声を上げてしまう。

「すっ…すいませんんん!!ほんますいません!いけますか!?」

ゴリゴリちゃんを投げ出して、レジ台に両手をつき、レジ台を飛び越えてくる。

かっこよくねぇよこの野郎

それでも、店員さんは私の肩を揺らす。

「あ、あぁああのっ…」

『いや、いけますいけます…』

そこで、初めて店員さんの顔に注目する。



ドキ



…え?

何これ ドキ って。

いかにも心配そうな、でも真剣な顔つき。



ドキ



店員さんの顔が、思ったより近くて。

『…』

「…」

とりあえず退いてください

「す!すいませんっほんますいません!」

ペコペコと頭を下げる店員さん。

何か…

『謝ってばっかやなぁ』

気付いたら、口から言葉が出とった。

「俺ドジやから…」

お、敬語外れた。

私につられたんかな?

何ていうか、可愛らしい。

…ちょっと、からかってみよ。

『そうなん?』

「こういうんって初めてやから緊張しとって…」

『ふぅん…どおりで、見ぃへん顔やと思ってたわ!』

「まぁ…今日デビューやしな!」

『へぇ…あれ、敬語外れてますやん』

「うぁっ!?す、すいません!」

"うぁっ"て何や、"うぁっ"て。

ほんま、この人可愛らしい。

『えぇよ、タメ口で。私もタメでいくから!』

「…。…お、おおきに…!」

店員さんは一瞬迷ったような素振りを見せたけど、すぐに笑顔になった。



ドキ



『あ、私ゆでたまご!西池田中3年や!』

「同い年か!俺は四天宝寺テニス部3年、忍足謙也!よろしゅう!」

『おん…四天宝寺かぁ…ほな、こっからちょっと遠いんちゃう?』

「んなことあらへんで!チャリで10分くらいや」

『チャリで10分!?四天宝寺ってそんな近くなかったやろ!』

たしか、20分くらいかかるはずやで。

どういうこっちゃ?

「あぁ、俺がチャリ漕ぐん速いだけや!」

自称かよ

「NoスピードNoライフっちゅー話や!」

『あぁ、それでピッてすんの速かったん…』

「おん…」

ニ人で、投げ出されたゴリゴリちゃんを見る。

「…とりあえず、新しいのん用意するわ」

『頼むわ』
 
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