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キンコンカンコンとチャイムが鳴った。

ちょうど今からお昼休み。

今日は委員会やら部活の集まりやらで、いつも一緒にお昼ご飯を食べている子達は不在だ。

『お昼どーしよっかなぁ〜…』

せっかく母が作ってくれたお弁当を食べない訳にはいかない。

ぐるりと教室を見渡すと、いそいそとお弁当箱を取り出す緑谷くんが目に入った。

私はいつも中庭で友達と食べてるから知らなかったけど、緑谷くんってお昼ご飯一人で食べてるのかな…?

私は緑谷くんの席の近くまで歩み寄る。

『ねぇ緑谷くん、一人?』

「ゆでさん!う、うん…一人だよ」

『一緒に食べていい?お隣失礼〜!』

聞いといて何だが、私は彼の返事を聞く前に隣の席から椅子を拝借してそこに腰掛けた。

「わわっ…いいの?」

『なんかいつも一緒に食べてる子達が委員会やら部活やらで呼び出しされてるっぽくてさ、一人なんだよねぇ』

「そうなんだ…みんな大変だね?」

『ね〜!』

緑谷くんと私は他愛の無い会話をしながら、昼食の準備をする。

『緑谷くんは自分でお弁当作ってるの?』

「うぅん、お母さんが早起きして作ってくれてるよ。ゆでさんは?」

『ウチんとこも同じ、………ん?』

「どうしたの…?」

『なんか妙にお弁当箱が軽い気が…』

多少の違和感を覚えつつも私はお弁当箱を開いた。

するとそこには、

「『!』」

無かった。

お弁当箱の中身が。

…なんにも入っていなかった。

いや、空のアルミカップとか、米粒が残っていたりとか、お弁当が"在った"形跡はあるんだけれど。

『………まさか…』

嫌な予感がして振り返る。

「あァ、間抜け女が作ったんじゃねェのか。どーりで美味ェ訳だ」

『…爆豪くんっ…!!』

イラッとして彼に掴みかかろうとすれば、緑谷くんに手を引かれてその場に留められた。

「ま、待ってゆでさん!」

『離して緑谷くん!』

「喧嘩は良くないよ、僕のお弁当半分あげるから…!ね?少し落ち着いて…」

「クソデクは黙ってろ、喋んなうっぜェから!!」

『緑谷くんに怒鳴らないでよ、関係無いじゃん!』

緑谷くんを挟んで爆豪くんと私が言い合いをしていると、クラスメイトから何だ何だと視線を浴びる。

『返してよ私のお弁当!何で勝手に食べんの!?』

「腹減ってたから食ったんだよ!吐きゃあいいんか、あァ!?」

『きったな!信っじらんない…!』

あぁもう、イライラする!

じろりと爆豪くんを見ると彼は私を鼻で笑った。

「別にタダで貰うたァ言ってねェだろうが!オラ、受け取れや!」

『わっ…!』

爆豪くんがこちらに何かを投げ、反射的にそれを受け取る。

私の手の中には500円玉が収まっていた。

『…はぁ。一々腹を立てるのも面倒になってきた』

手元の500円玉を見て私は溜め息を零す。

『ごめん緑谷くん、ちょっと購買行ってくるね』

「え、あ、うん…」

これ以上イライラしないためにも、私は足早に教室を出た。
 
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