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「お待たせしまし…」

ガチャリと自室の扉を開ければ、そこにはプロレスごっこをするふたりがおった。

『ちょ、ギブギブギブ!っあぁあああ光くん助けて!』

「おぉ、来たか光!」

謙也さんがたまごさんに技をかけているところにちょうど来てしまったらしい。

ていうかおかしくないか、いろいろと。

仮にも恋人やろ?

部屋の主の俺がいうのも変な話やけど、もっとやるべきことがあるんちゃうん?

「とりあえずジャマなんで退いてください。通れませんわ」

「おぉ、スマンな光」

『腰いった〜…!』

のそのそと起き上がるふたりは、そのあたりに腰掛ける。

俺は机の上に冷えきったお茶と、さっき貰ったお菓子を並べた。

その間もふたりは楽しそうに話しとった。

「…で」

俺はその場に腰を下ろす。

「どないしたんすか」

『え?あぁ!せやった、これ…しょーもないけど』

たまごさんはかばんを漁り、何かを差し出してくる。

「これは…」

袋を開けながら口を開くと、たまごさんが説明を始めた。

『スコーン。初めて作ったんやけど…どない?』

感想を聞くってことは、今食べろっちゅーことやろか。

ちらりと謙也さんに視線をやる。

「今回も粉々なっとるんちゃう?」

『なっ、失礼やな!』

普通に笑っとった。

自分の彼女が他の男に手作り菓子渡して、食べるところを見るんは嫌やないんか。

「…」

ぱくっとスコーンをひと口かじると、ふんわりと甘さが口の中に広がった。

「…まぁ、食えんことはないっすわ」

「おぉぉ!よかったな、ゆでさん!」

『忍足くん…よかった〜!ドッキドキしたわぁ』

なんやこの人たちまだ苗字で呼び合うとるんか。

まぁまだあのストーカー事件から数日しか経ってへんしな。

「で、なんでスコーンなんすか?」

『あぁ…この前いろいろ助けてもろたから、お礼をと思って…』

「それだけのためにウチ来たんすか…」

『あ、あと自転車も取りに来た!』

「ふぅん…」

それにしてもなんで謙也さんがついてきたんやろか。

ひとりで男の家へ行かすんが心配やったんやろか。

「光ん家ってゲームとかあらへんの?」

いや、たぶんただの暇つぶしやな。

暇やったからウチ来たんや、そういう人や謙也さんは。

「そのへんに置いてるぶんだけっすわ」

『私もゲームやりたい!スマプラないん?』

「大乱闘スマッシュプラザーズX!久々にやりたいわ俺も!」

目の前の何の色気もないカップルふたりに、俺は小さくため息をついた。
 
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