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俺の名前は山田。

35歳独身、交際経験は人生で一度もない。

会社には通っているけれど、さほど良い成績をあげているわけでもない。

何の楽しみもない人生。

俺は絵に描いたようなダメ男だ。

夢も希望も何もない俺。

何のために生きているのかも分からない俺。

そんな俺のモノクロの世界に一筋のヒカリが差した。



"ゆで たまご"という存在だった。



***




ぴろろん ぴろろ〜ん



いつも通勤途中に寄るコンビニ。

俺はそこでたまごちゃんに出会った。

もちろん客同士なので言葉を交わすこともない。

『でさぁ〜聞いてや千夏さん!』

「あはは…たまごちゃんの話は聞いてて飽きへんわぁ」

そこで初めて名前を知った。

あの女性店員(たぶんアルバイトだろう)と、随分仲が良いようだった。

屈託なく笑うこの子には未来とか希望とか、俺にはないそういうものに溢れている気がして。



"鬱陶しい"



そう思っていた。

なので自分の中での第一印象は良くなかった。

なのに俺がコンビニに行く時は結構な確率でその子は居た。

どうやら暇人なようだ。

決まってその子はお菓子を購入する。

制服を着ている日もあった。

あの制服は地元の中学校の制服…

そこであの子の通っている中学、好みのお菓子などを知った。



ぴろろん ぴろろ〜ん



気付けば俺は、特に用がない時でもコンビニに通っていた。

目的はたまごちゃんに会いに行くためだ。

そう、俺はコンビニに行く時は無意識にたまごちゃんの姿を探すようになっていたのだった。
 
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