Resonance

□08
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スパーダはちらりとこちらを見る。

「船に乗り込んだ時は何ともなかったよな…何か考え事でもしてたのか?」

『!…スパーダって、人のことよく見てるよね。ルカとイリアのこともそうだけどさぁ』

へらっと笑って見せると、スパーダはそんな私をじっと見つめた。

「誤魔化すなってェの!」

『うっ…』

スパーダの視線から逃れることは出来なさそうだ。

観念した私は素直に話し始めた。

『…スパーダは…戦うの、恐くないの?』

今更だし愚問だとは思うけれど、私は彼に問うた。

「オレの前世を誰だと思ってるんだよ、聖剣デュランダルだぜ?」

『そっか、そうだったね』

小さく呟く私にスパーダは頷く。

「戦場を恐いと思ったことは一度もねえよ」

ハッキリとそう言ってのけるスパーダに、凄いなぁなんて漠然とした感想しか出てこない。

『流石 ベルフォルマ家のお坊ちゃまだね、家訓の通り"騎士"って感じ!』

「ベルフォルマの家訓…なぁ」

"お坊ちゃま"に反応しててっきり"うるせェ!"って言われるかと思っていたけれど、スパーダは特にそれについては突っ込まなかった。

「"心に剣を持ち 誰かの楯となれ"

"右手に規律を 左手に誇りを"

"己を殺し 永久の礎にせよ"

"正しき道を 正しく歩め"

"個よりも 全に仕えよ"」

スパーダはベルフォルマの家訓を口にしながら、壁に背中を預けて天を仰ぐ。

「…なんて、家訓にもいろいろあるけどよ」

『うん…?』

「結局のところ、家訓なんて関係無ェと思うんだ」

スパーダはじっと私を見据えた。

「オレはオレの意志でお前の楯になりたいと…守りたいと思ったんだ。だからその為に戦う」

『!』

しっかりと目を見てそう言い放つスパーダに思わず引き込まれそうになった。

「もちろん、ルカやみんなのことも忘れちゃいねェけどな!」

ニヤリといつもの笑みを浮かべるスパーダに、私もフッと笑みを返した。

スパーダって強い人だなぁ。

それに自分の信念を強く持っている。

一々悩んでいる自分なんてちっぽけに思えてくるくらいだ。

私は自分の心の中のモヤモヤがなんとなく軽くなったような気がした。

スパーダはいつだって私の心を救ってくれる。

本当に、感謝ばかりだ。

「ま、そういうことだ。お前にはオレが居る。安心しな!」

『スパーダ…』

「スパーダ兄ちゃん…」

「スパーダくん…」

「…」

「『…えっ!?』」

突然聞こえてきた第三者の声に、スパーダと私は驚き振り返った。

視線の先には、少し離れた所からこちらを眺めるエル、アンジュ、リカルドが居た。

『み、みんな!?』

「お、お前等いつからそこに居たんだよ!?」

スパーダと私は思わず大声を上げる。

「タマゴが起きる少し前…くらいかしら?」

「スパーダ兄ちゃん鼻の下伸ばし過ぎやで、やらし〜なぁ!」

「良からぬことを始めたら撃つつもりだったが…手間が省けて良かった」

怖ェよ!!

三人はぞろぞろとこちらへとやって来る。

あ、コーダも居る。

「いやぁ〜それにしてもえぇもん見せてもろたわぁ〜!」

「こらエル、その辺りはデリケートなところなんだから触れないでおきましょう?否定はしないけど…」

「フン、口だけにならないと良いがな」

「うっせェな!余計なお世話だよ!」

スパーダは顔を赤くしており、私はそんなスパーダの隣で小さく笑った。



(私もスパーダみたいに強くなりたい)
 
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