Resonance

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ダリルがスパーダを連れて行ってしまったため、残された私達がしばらく待っていると…

「おぅ」

ダリルが一人でこちらに戻って来た。

「あら、スパーダくんは?」

「アイツならすぐに…っておいスパーダ!なーに照れてるんだよ、早く来いって!」

ダリルが振り返り、少し遠くの方に声を掛ける。

その視線の先を辿ると…

『!』

柱の後ろに隠れるようにして立っていたスパーダが、私達の前に姿を現した。

「う…うるせェ!それよか服返せ!」

「悪い悪い!ついウッカリ持って来ちまった!」

「ウソつけ!オレが着替えられないようにしたんだろ、ったくよ…ん…?」

スパーダとダリルが何やらやり取りをしているけれど、全く頭に入って来ない。

だって…

『(格好良い…!)』

目の前に居るスパーダは、いつもとは全然違う雰囲気で。

豪華なジャケットやパンツを身に纏って羽根付きのハットを被り、首にはスカーフを巻いていた。

いつものラフな格好も好きだけど、今目の前に居るスパーダは凄くお上品で、なんだか大人びていて…

本当に貴族なんだなぁなんて思った。

驚いて固まっていたのは私だけではなく、他のみんなも同じようだ。

「え、えっと…どちら様…ですか…?」

ハッとした様子でルカが声を掛ける。

「スパーダだよ、スパーダ!マジで分かんねーの?」

ダリルがスパーダの背中をバシバシと叩いた。

「い…いってェな、叩くなよ」

スパーダは居心地悪そうに目線を逸らす。

「それよりそこのお姉さん、ご感想は?」

『…えっ私!?』

ダリルがスパーダの肩に肘を掛けながらニヤニヤと私を見る。

「お、オイっダリル…!」

「いーからいーから!…で、どうよ?」

「タマゴ、別に答えなくて良いからな!?」

顔を赤らめるスパーダと目が合って、ドキッと心臓が跳ねる。

『えっと…』

「…」

「…♪」

スパーダと私を見て、ダリルはなんだか楽しそうにしていた。

『………うん、良いと思う…格好良いよ』

言い終わると同時になんだかこちらまで釣られて赤くなってしまう。

それでもしっかりと思ったことを伝えれば…

「〜〜〜ッ…!!」

スパーダは耳まで赤くして、少し後退った。

「…あぁくそっ!着替えてくる!!」

そしてそのまま、スパーダは走り去って行ってしまったのだった。

『あ、あれ、何で…?私、キモかったかな…!?』

「いーや、照れ隠しだろ!」

落ち込む私とは真反対に、ダリルは楽しそうに笑った。

そんな私達の隣では、イリア達がヒソヒソと話をしている。

「今の…見た…?凄くサマになってたんだけど…」

「本当、服一つでこんなに変わるものなのね」

「気品溢れる感じだったね。普段の様子を見ているととても信じられないけど」

「流石貴族と言ったところか」

みんなもスパーダの変わりっぷりに驚いていたようだ。

「それよりタマゴ、さっきの!何よアレ!ドキドキしちゃったじゃない!」

「私もよ。二人とも可愛かったわ、うふふ」

『や…やめてよ二人とも〜…!』

イリアとアンジュに先程のことをイジられている間に、スパーダが戻って来た。

いつもの格好に着替えたらしい。

『(あ…)』

いつもの格好のスパーダを見て、私の中ではピンとくるものがあった。

「ダリル、何なんだあの服は?」

「餞別だ餞別!旅してりゃ服とかいろいろ困るだろ?だからやるよ」

「けどあれだと動きにくいだろ!」

「おっとそこは考えてなかった!ははっ悪い!」

「まぁ…捨てるのも勿体ねェから貰ってくぜ。ありがとな」

「それくらい気にすんなって!じゃあ、旅頑張れよ!面白い話があったら聞かせてくれよな」

スパーダはダリルと少し話し、じゃあな!と大きく手を振った。

「はー…ったくダリルのヤツ…」

『…』

「あ?ンだよ、タマゴ」

じーっとスパーダを見ていると、それに気付いたスパーダが声を掛けてくる。

『さっきのも良かったけど、いつもの方が好きだと思って』

今回は特に恥ずかしがることなくそう言うと、スパーダは驚いたような表情を見せた。

次にニヤリと口角を上げて笑う。

「…っへへ、分かってんじゃねーか!」

『そう?えへへ』

スパーダと私は先程までの気まずさ等忘れて、心から笑い合った。

(さ、とっとと商店主の家に向かおうぜ!)
(うん!)
 
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