Resonance
□03
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「…で、これからどうするよ?異能者捕縛適応法で捕まった以上、家には帰れないしな」
「その上、軍の脱走者だもんね。父さんと母さんには迷惑掛けられないし…」
スパーダとルカがそこまで話してハッとする。
「「「…タマゴ…」」」
『…』
みんなは揃って私を見た。
彼等の言いたいことは分かる。
異能者捕縛適応法のせいで捕まってしまって、戦争は嫌だと泣いた私。
そんな私は戦場から抜け出し、やっと自由の身になれたのだ。
つまり今このタイミングで、王都レグヌムに…家に帰ることが出来るのだ。
それは私が最初からずっと願っていたこと。
「…タマゴ、どーするよ」
そう言いながら、じっとこちらを見るのはスパーダ。
ルカとイリアも無言で私を見つめる。
『…私、ずっと帰りたかった』
私は目を伏せてそう言った。
『みんなの言う前世の話は私には全く分かんないし。戦うのは嫌だし、運動神経もそこまで良いわけじゃない』
「タマゴ…」
『でもね…』
私は言葉を続ける。
『短い間だけどみんなと一緒に居て思ったんだ。なんか…安心するなぁって。変だよね、命を賭けて戦ってるのに安心するなんて』
「変なんて、そんなこと…」
ルカが言い切る前に私はまた開口する。
『私には私なりの…転生者じゃないからこそ出来ることや気付くことがあるかもしれない。強くないから足を引っ張ることもあるかもしれない。けど…それでも、みんなと一緒に居たいって…思ってるよ』
そこまで聞いて、ルカとイリアは顔を見合わせていた。
そんな二人の隣で、スパーダは顔色を変えずに私に問うた。
「次はいつレグヌムに帰れるかも分からねェし、こっから先は今まで以上に危険が伴うかもしれねェんだぜ。それでも…いいのかよ?」
『…』
灰色の瞳が私の目を射抜く。
『…守ってくれるんだよね、スパーダ?』
「!…あァ!」
スパーダは力強く頷いてくれた。
『私は帰らない。みんなと一緒に行くよ!』
えへへと笑うと、正面からスパーダが飛び付いてきた。
「タマゴ〜!!良かったぜマジで!」
『うぁっ!スパーダちょっと…重い…!』
「アタシも、ここでお別れって言われたらどーしようかと思ったわ…!」
「タマゴが居てくれるなら僕達も心強いね!」
私達は笑い合った。
「じゃあ、とりあえず当初の予定通り、聖都ナーオスに向かいましょうよ。他に手掛かりも無いしさ」
「あぁ、ナーオスには転生者が居るって話らしいな。ここからどう行けば良いんだ?」
「ここから南東の峠を越えた先だと思うけど…」
ルカがそう言うと、イリアはピクリと反応する。
「あらあら流石ルカさんねぇ〜、物知りでいらっしゃること」
「…」
チトセのことを引き摺っている様子のイリアに、ルカは黙ってしまった。
「イリア、いい加減にしろよ」
「…フーンだ。いーわよ、もう水に流したげる」
「ルカ、イリアの優しさに感謝しろ しかし」
「あ…ありがとう」
ルカも大変だなぁなんて思いながら、私はその様子を見守る。
「じゃ…ルカ、スパーダ、タマゴ。行きましょ」
イリアの声に続いて、私達は歩き出した。
(オーナー、自分勝手でごめんなさい)
(しばらく仕事に戻れそうにありません)