休憩所

□ガチバトルですが何か?
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『よっしゃ――っ!』

〈100m走、他の走者を寄せ付けない圧倒的な走りを見せたのはAクラス 早瀬菜月!!〉


雲ひとつない晴天に向かって菜月は汗を流しながらも満面の笑みを向けた。

季節は秋、体育祭真っ最中の氷帝学園で鳴り響いた放送は、菜月の勝利を伝えるもの。


「上出来だ菜月」

『さすがね』


同じ赤組の跡部と翼も満足の結果のようだ。


〈この一位は大きいです!
しかも早瀬選手に続くように赤組が上位を占めていきます。
赤組、縮まったと思われた白組との差を再び広げてきました!〉

『む〜、困りましたねぇ…;』


赤組総大将の跡部を見据えながら策を考えるのは白組総大将の真白。

次の競技は借り物競争…奈々と日吉の出番だ。


『まぁまぁ真白っち、楽しくいこうよ♪
あたしが一位もって帰るからさ!』

「あの人に今日こそ下剋上してみせます」

『……お願いします、二人とも』

『心得たっ!!』

「下剋上だっ!!」


これ以上の赤組快進撃を阻止するために真白は奈々と日吉に託すことにした。

その気持ちを受け取り、二人は肩を並べてスタート位地に向かう。

二人を送り出す白組声援は凄まじいものになった。


〈おーっと、白組はここで今回の注目株を二人投入してきました!
無限の体力と可能性を秘めた和泉奈々と、本日も平常運転の下剋上!テニス部次期部長候補、日吉若の登場だーっ!!〉


アナウンスによって会場は更なる盛り上がりをみせる。

赤組はこれといって強敵になりそうな選手は見当たらず、ちらほら運動部員が見えるほど。

借り物競争はいただいたと二人は思った。


パーンッ


そして始まった借り物競争。

一番走者は奈々だった。


『これっ!!』


圧倒的な走りで一番にお題を手にした奈々は、紙の内容を確かめた。





"メガネ"


『侑士――――――っ!!』


奈々は迷うことなく走り出した。


「奈々っvV」

『メガネちょうだい!』


自分の方へためらわず走ってきた奈々を受け止めるように腕を広げた忍足だったが、メガネだけを持っていかれ、悲しみに浸っていた。


「…………orz」

『そもそも敵チームに協力しないでよ』

「忍足、今のお前たちは敵同士だ!」

「なんでやろな……心の隅っこでオチが読めてた俺がおったんや……(泣」

「………すまねぇ、言いすぎた;」


自分<メガネ がよほど辛かったみたいだ。

忍足は地面にのの字を書き出し、あまりの光景に跡部はつい謝ってしまった。


「せめて俺ごとつれてってほしかったわ…;」


パーンッ


そうこうしているうちに、トップは奈々に決まったらしい。

次のレースが始まっていた。

そして順調に上位のほとんどを白組でおさえ、次はいよいよ日吉の番。


「っ?!」


"ライバル"


日吉は文字を見た瞬間悩んだ。

同じ学年の鳳や樺地はなにか違うし、だからといって勉学面で争うほどのものもいない。

自分に勝った切原や越前は他校。

そうなると自然と出てきたのは跡部だった。


「跡部部長、俺と来てください」

「アーン?…内容は何だ」

「"ナルシストな人"です」

「ア゛ーンっ?!」

『あら、ピッタリじゃない。若のためにもいってあげて!』

「――ッチ!行くぞ、日吉!」


翼の一言でしかたなしに走る跡部。

出ると決めたらできる限りの早さで走り、先にゴールしようとしていたペアを抜かして一位に輝いた。


「で、結局何だったんだ?俺様の目は誤魔化せねぇぜ」


いくらテニス部といえど、全力で走ったため少しだけ息が荒い跡部は、同じく隣で息を荒くしている日吉にたずねた。

日吉も隠すことでもないと判断し、さらりと答える。


「………"ライバル"です」

「…俺様に勝つつもりか?」

「翼さんは譲る気がありませんから」

「「……………」」


本人のいないところで小さく火花が散った瞬間だった。


 
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