SHORT

□人肌が恋しいの
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「…なんで日吉がここに?」

「あ、長太郎くん、大丈夫?」

「朝よりはマシになった、のかな……。じゃなくて、」

「長太郎くんに林檎買いに行った帰りにたまたま逢ったんだ!日吉くんも熱あるみたいで早退してきたらしいんだけど、今家にご両親がいないの。それでせめてご両親のどちらかが帰ってくるまで家にいたらってどうかと思って」

「ということだからよろしくな、鳳」

「…うん、もちろん」





家に帰ったらリビングのソファーに座ってた長太郎くん

当たり前だけどしんどいみたいで、冷蔵庫に入ってたミネラルウオーターのペットボトルを額に当てながら背もたれにぐったり倒れてた

長太郎くんは帰ってきた私を見ると起き上がろうとしてくれてたけど、すぐに後ろにいた日吉くんを見つけたのか目を見開く


事情を説明して私はキッチンに向かった

行く前、水に浸しておいたお米を火にかける

ちょっと多めにしておいてよかったなぁ

林檎をスーパーの袋から出しながら大切なことを思い出す

よく考えたら、長太郎くんたちが食べれなかったら作る意味がないじゃないか





「長太郎くん、日吉くん!」

「なぁに、なまえさん?」

「今、なにか食べれそうかな?お粥と林檎のすりおろし作ろうかと思ってるんだけど」

「俺は大丈夫、なまえさんが作ったやつならいつでもどんな時でも食べるよ」

「…俺も大丈夫です。なまえさんの手料理、食べてみたいですし」

「!いや、私火つけて見てるだけだし手料理ってほどじゃないよ……!」

「でも、俺までいいんですか?」

「家に呼んだのは私なんだから!じゃっじゃあ頑張ってお粥とか作ってきまふ…きます!!」

「うん、待ってるね」





若干噛みながら、もう1回キッチンに引っ込む

長太郎くんはあんなことをスラッと言ってくれるからすごく恥ずかしくなるし、照れちゃう

でも日吉くんはそういうの全く言わなさそうなイメージだったからそれはそれでビックリ

最近の中学生はませてるよね

…いや、私も中学生か


林檎の皮をむいてすりおろしていく

これ結構筋肉使うなぁ





「なまえさん、」

「!!え、うわっ!」

「すみません、驚かせましたか?」

「ちょっとビックリしちゃった、ははっ…!どうしたの?なにかあった?」

「いえ、なんとなくです」

「ちゃんと寝てなきゃダメだよ?」





いつのまにか後ろにいた日吉くんに、思わず林檎を落としそうになる

私がそう言うと肩に重さと暖かさを感じた

視線を斜め下に向けるとサラサラとした茶色の髪の毛

ここで日吉くんが私の肩に頭を乗せていることが分かった

風邪も引いて、人肌が恋しいのかな?

ていうか背の差が結構ある気がするんだけど





「やっぱり腕、しんどいですか?」

「これくらいは大丈夫だよー」

「本当ですか?」

「私そんなに弱くないからね」

「すぐに、折れてしまいそうです」

「ひよし、くん?」


「なまえさん!」


「あ、長太郎くん!」

「…日吉、なにしてるの?」

「なにも?なまえさん、お茶かなにかもらってもいいですか?」

「うん!長太郎くんもいる?」

「…もらおっかな」

「ちょっと待ってね」





軽く手を洗ってから冷蔵庫からお茶を取り出してコップに注ぐ

2人共しんどいのになんでキッチンにいるんだろ

コップを渡してからお鍋を覗いてみると、もうできてるみたい





「お粥できたけど、今食べれそうかな?」

「うん、もちろん!」

「もらいます」

「卵とか梅とか入れた方がいい?」

「じゃあ俺は梅入れてほしいな」

「俺は塩だけでいいです」

「了解!じゃあ座ってて?持っていくから」

「ありがとうございます」





2人の背中を見送って、食器棚からお皿とスプーンを取り出す

それからお皿によそって、長太郎くんのお皿にだけほぐした梅干しを入れた

塩の入った瓶とさっきすりろした林檎とそのよそったお粥とスプーンをお盆に乗せてテーブルに持っていく


4人テーブルに、斜め状に座る2人

どっちも膝の上に手を置いてて、なんだか参観の時に緊張してる小学生みたいだ

そんな2人の前にお粥とかを置いて私はキッチンに引っ込もうとすると手首を掴まれた

その手を辿っていくと長太郎くんだってことが分かる

とても熱かった





「やっぱり食べれそうにないかな?」

「ううん、それは大丈夫。けどどこか行くのかなって」

「キッチンに行くだけだよ!」

「!あ、そっか、ごめん」

「ううん、無理して食べちゃダメだよ?日吉くんも」

「はい」

「あとここに薬置いとくから食べ終わったら飲んでね」

「2錠でいいよね?」

「うん!」





美味しそうに口にお粥を運んでくれる姿を見て、なんだか胸あたりがあったかくなった気がした





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