SHORT
□雨模様。
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「さよならだよ、晴矢。…いや南雲くん」
「!」
「バイバイ」
そう言って扉を閉めたなまえ
俺はそれから少しその扉を見つめることしかできなかった
すると涙が無意識に頬を流れていた
愛してたなまえ
そのなまえはもう隣にいない
そう考えたら立っていれなくなった
そしてポケットに入れていた小さな入れ物を取り出した
「クソッ…!!」
俺はそのままそれを扉に思いっきり投げつけた
すると中に入っていた物が転がり出てきた
指輪
俺となまえの名前を掘ってもらった特注品だ
今日なまえに渡すつもりだったやつだ
「これからもずっと好きだ。結婚してくれ」とでも言いながら渡すつもりだった
俺はそれをなまえに渡すために毎日バイトしてた
金を稼ぐために、好きでもない女に愛を囁いたりした
なまえが好きで好きでたまんなくて、なまえに会ったら全部話しちまいそうになりそうだったから会うのもできるだけ抑えた
俺の方がおかしくなっちまいそうだったけど、なまえのためだと思って我慢した
なまえなら分かってくれてる
なまえなら大丈夫
俺は高をくくってたんだ
それで結局なまえに寂しい思いをさせたのに違いはなくて、こうなった
なんでなまえに聞かれたときにちゃんと言わなかったんだよ…!
なんでなまえが好きだってちゃんと言わなかったんだよ…!
こんなに好きで好きでたまんねぇのに
あんなに離したくなかったのに
俺はバカだ
バカ以外言いようがねぇ
「なまえ…なまえっ!
好きっ、好きなんだよ…!!
だからっ、だから行くなよっ!!
なまえ!!!!」
雨模様。
(好き)
(だからこそすれ違った)