SHORT

□泪色。
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あの日から数日たって、私は連絡もせず、晴矢に別れを告げるために晴矢の家を訪れた




ピンポーン




扉を挟んで、晴矢が廊下を走る音が聞こえた




「はぁい…、…なまえじゃねぇか。どうしたんだよ、連絡も無しにいきなり…。とりあえず上がれよ」

「いや、すぐ終わるからいいよ」

「?そうか…?」




私は玄関から見える範囲で見渡した

初めてキスした晴矢の部屋。
一緒にDVDを見ながら騒いだリビング

ほかにもたくさん、たくさん晴矢との思い出がいっぱい詰まってる


けど…、
今日で終わりなんだ

私は深呼吸をして、晴矢の目をまっすぐ見る




「…別れよう」

「は…?」

「別れたいんだ、私」

「なっ、何でだよ…?!」

「私は晴矢が何考えてるのか分かんない…!私を本当に好きでいてくれてるのかとか、私は本当に晴矢の彼女でいいのかとか、私はいっぱい悩んだ!!
私と最後に歩いたのはいつ?
私に最後に好きって言ってくれたのはいつ?
教えて…、教えてよ…!!」

「…俺は絶対別れねェからな」

「…なら何でほかの女の人と帰ったりしてるの…?!」

「!なんでその事…」

「そんなの今はいい!!
…答えてよ、晴矢!!」

「そ、れは…」

「ほら言えない!私は本気で晴矢が好き…、大好きだった!!
でも晴矢は好きじゃないんでしょ?!」

「俺は…、ッ」

「…もういい。さよならだよ、晴矢。…いや南雲くん」

「!」

「バイバイ」




私は扉を閉めた

あの日と同じように頬をさす風が冷たかった

でもあの日と違うのは、涙のせいか余計に頬が痛かった

私はもう振り返らずにただ歩いた








(愛していました君のこと)
(いまとなってはこの言葉でさえ泪色。)



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