あの日から数日たって、私は連絡もせず、晴矢に別れを告げるために晴矢の家を訪れた
ピンポーン
扉を挟んで、晴矢が廊下を走る音が聞こえた
「はぁい…、…なまえじゃねぇか。どうしたんだよ、連絡も無しにいきなり…。とりあえず上がれよ」
「いや、すぐ終わるからいいよ」
「?そうか…?」
私は玄関から見える範囲で見渡した
初めてキスした晴矢の部屋。
一緒にDVDを見ながら騒いだリビング
ほかにもたくさん、たくさん晴矢との思い出がいっぱい詰まってる
けど…、
今日で終わりなんだ
私は深呼吸をして、晴矢の目をまっすぐ見る
「…別れよう」
「は…?」
「別れたいんだ、私」
「なっ、何でだよ…?!」
「私は晴矢が何考えてるのか分かんない…!私を本当に好きでいてくれてるのかとか、私は本当に晴矢の彼女でいいのかとか、私はいっぱい悩んだ!!
私と最後に歩いたのはいつ?
私に最後に好きって言ってくれたのはいつ?
教えて…、教えてよ…!!」
「…俺は絶対別れねェからな」
「…なら何でほかの女の人と帰ったりしてるの…?!」
「!なんでその事…」
「そんなの今はいい!!
…答えてよ、晴矢!!」
「そ、れは…」
「ほら言えない!私は本気で晴矢が好き…、大好きだった!!
でも晴矢は好きじゃないんでしょ?!」
「俺は…、ッ」
「…もういい。さよならだよ、晴矢。…いや南雲くん」
「!」
「バイバイ」
私は扉を閉めた
あの日と同じように頬をさす風が冷たかった
でもあの日と違うのは、涙のせいか余計に頬が痛かった
私はもう振り返らずにただ歩いた
泪色。
(愛していました君のこと)
(いまとなってはこの言葉でさえ泪色。)