ローダンセを貴方に

□拾碌幕
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目が覚めると真っ白な部屋の真っ白なベッドの上にいた

窓から差し込む光は日光そのもので、全部を錯覚させられる

少し離れたところにある窓の外には晴れ晴れとした青空


ココはどこだったっけ

そんなことを考えながら上半身だけ起こしてボーっとしていたら、急に部屋の扉が開いた

思わずベッド脇に置かれていた神然丸を手に取れば、入ってきた奴は慌てたように両手を身体の前で左右に振る

その後ろからグリムジョーも入ってきて、昨日のことを思い出した





「ディ・ロイ、お前1回斬られてみろよ。その頭のいかれ加減がマシになるかもだぜ?」

「絶対嫌に決まってんだろ!?」

「瑞希、飯食えるか?どっか不調とかあるか?」

「グリムジョーが優しい?!」

「本気で俺が斬んぞ」

「風呂とか着替えの用意してきまーす!」

「…ちっ、」





その最初に入ってきた人の背中が扉を潜るのを見送った後舌打ちして、私には広すぎる真っ白のベッドに腰掛けたグリムジョー

この部屋は、白しかないせいかもしれないけれど、生活感がないと思う

私の死覇装とグリムジョーの髪の色はよく映えた





「不調はないし、逆にお腹すいたかな。グリムジョー、おはよう」

「………あぁ、はよ」

「けど、私は捕虜も同然の存在だよ。こんなによくしてもらっていいの?」

「俺が勝手にやってることだから気にすんな。大丈夫なら風呂入ってこいよ。その間に飯用意させといてやる」

「うん、ありがとう!そういえばさっきの人は?」

「アイツは従属官つって、俺の家来みてえな奴だ。あっちの部屋にシャウロンってやつがいて、アイツはディ・ロイ。あと3人いるが、今は反乱分子の虚の討伐任務に行ってやがる」

「家来って、グリムジョーやっぱりすごいんだね」

「まァな。ほら、はやく入ってこいよ」

「はーい!」





グリムジョーが指差す方向にあった扉を開けば、脱衣所があって、その奥にはまた白い空間があった

白いバスルームにバスタブ

そのバスタブには白いお湯が張られていてそこに浮いている白い薔薇

藍染の趣味なのか、これは?

それともグリムジョー?


お湯に浸かれば、今度は私の一房だけ紅い色をしている髪が映えた

その紅は、ここに連れてこられる前に目に嫌でも焼き付いた恋次や一護たちから滴っていた紅を思い出す

気分が悪くなってきて、早急にお湯からでて、身体とかを洗い流した

どんな着替えが用意されているかとても不安だったけれど、用意されていたのは着流しで少しホッとする

グリムジョーの髪と似ている色が下地で、そこに金の刺繍がされている、高価そうではあるけれどいたって普通の着流し

ほかの奴らと同じ白いあの服だったらそっこう破いてただろう

身体からはいつもと違う匂いがした


さっきグリムジョーが潜って行った扉を抜ければ、とても広い部屋だった

言わずもがな白いソファーでグリムジョーは寝転んでいて、その後ろにはさっきの人とものすごく細い人が立ってる

グリムジョーは、私に気づくと手招きしてきたから、そちらに向かった

大理石か、はたまたなにか違う石でできた床は、素足の私にはとても冷たく感じて、踏みだす度にぺたぺたと音が鳴る

近くまで来れば、手を引かれて起き上がったグリムジョーの股の間に座らされた

そのまま腕をお腹に回されて抱きしめられる

身長的にキツそうだなあとグリムジョーを見上げた


その直後、後ろからふいた音が聞こえた次の瞬間それは爆笑に変わって、思わず肩を揺らす

そちらに首だけでも向ければ、ディ・ロイっていう人がお腹かかえてゲラゲラ笑ってた

横の細い人も口元を手で隠しながら上品そうに笑ってる

上から慌てたような大声で耳がキーンてなった





「ぐっ、グリムジョーかっわいー!!あはははは!!!イールフォルトとかにも見せてやりたかったなー!あはっ、あはははははは!!!!」

「心配せずとも、帰ってきてもこれは続いているだろうから安心しろ」

「うせェぞてめェら!!!」

「わら、いがとまらない!!!えははははひ!!!!っげほ、やべっ笑いすぎ、て、げほっげほ、あはははは!げほ、」

「そうまでなってまだ笑うかてめェ!!!!」

「わら、いがとまらねっ!!」

「ッ飯はまだかよ?!」

「ふふ、いま持ってこさせよう」

「早くしやがれ!!っディ・ロイ!!お前も働け、出来損ないが!!!」

「あはは!!はーいよ!!」

「では一旦失礼する」





2人が出ていった後、なんだか気まずい空気が流れた

グリムジョーは私をペット扱いしてるんだろうか

それとも今まで抱きしめられる形じゃなかったからハマってるんだろうか

前に抱きしめたやり返し?


後ろのグリムジョーに触れている背中は、とても温かかった





「ねえ、グリムジョー」

「!うおっ。な、なんだよ」

「外は明るいけど、どうして?」

「藍染の野郎が、現世や尸魂界を真似たんだ。それと同時に、あれの下はいつも監視されてる」

「へえ……。あ、あとバスルームとこの着流しって誰の趣味?」

「ぶふっ!!!」

「え、あつっ!!!汚い!!!!!」

「わっ、わり…!!」





左手は私のお腹に回したままで、右手で紅茶を飲んでたら上で噴き出したグリムジョー

微妙に口からでた紅茶がかかって、思わず近くにあった布で拭いたらまた叫ばれた





「それ俺の服だっての!!!!」

「え?」

「アイツら洗ったやつをこんなとこに置いてやがったのかよ…」

「ご、ごめん!!それで拭いちゃった…!」

「いや俺が噴き出したのが………、」

「でもなんで急に噴き出したの?」

「なんにもな
「はーい!飯持ってきたぜー!!」
 おっせーよ」





またものすごい音と共に扉が開いた

そこにはディ・ロイさん達

ラーメン屋の出前みたいに銀色の四角い箱を持ってて、そこから大きいテーブルの上に料理を出してくれた

でもその量は、多く見ても2人分くらいしかなくて首をかしげる





「あれ?」

「……あぁ、俺らは基本飯食わねェんだよ。俺らの飯は霊子だからな。まあ気休め程度だ」

「へー!」

「だから全部食べてもらってもいい。そのために用意させたんだからな」

「あ、ありがとうございます……!」

「あとグリムジョー、藍染様に呼ばれていたぞ」

「……大人しくしとけよ」

「あいあいさー」





グリムジョーがだるそうに立ち上がってさっき2人が入ってきた扉を潜って出ていった

その背中を見送ってから大きいテーブルの傍にある椅子に腰掛ける

料理は何品か見たことがないものがあるけれど、どれも美味しそうなものばっかり

食べようとはするものの、2人からの視線が気になり、また首をかしげた





「そんなに、なんで私見られてるんですか?」

「いや、グリムジョーのタイプを分析中」

「は?」

「ディ・ロイ。…ずっとグリムジョーはアナタを探していたんだ」

「私を、ですか?」

「申し遅れました、わたしはシャウロン・クーハン」

「俺はディ・ロイ・リンカー!ディ・ロイでいいぜ」

「知ってると思うけど私は佐藤瑞希」

「あぁ、昔からわたしたちは知っている」

「昔グリムジョーと逢ったことあんだろ?1人で強い奴がいるって言ってどっか行って、帰ってきたと思ったら荒れまくってるし意味分かんなかったわ、マジ」

「それでよくよく話を聞いてみたらアナタが出てきた。おかしな死神に逢った、と。けれど虚國で死神なんているはずないと言ったんだが、かすかにグリムジョーの身体に霊圧の名残があって我々も信じたわけだ」

「昨日も霊圧が興奮とかで揺れに揺れて、そのせいで近くの反乱分子の虚たちが暴れだしたから今イールフォルトとかほかの従属官が討伐行ってる」

「本当に子供みたいな奴だ」

「んで、瑞希抱えて帰ってきたと思ったらわざわざ義骸にまで入って、現世行って、今着てる着流し買ってきたんだぜ」

「その色といい、アイツは分かりやすい。あとで礼を言ってやってくれ。喜ぶだろう」

「つか風呂見た!?いろいろアウトじゃね??!夢見すぎじゃね??!藍染が作らせたんだけど、さっき風呂用意してた時見ちまって俺もう爆笑しそうだったけど必死に抑えてっ!!!ぶははははははは!!!!!!!!思い出したら、っひ、また笑っちまう!!!!ひひっあはははははは!!」

「グリムジョーが作ったのかもとか私考えちゃって、余計わたし……!!!ふっ、あははは!」

「グリムジョーがあの趣味とか、いひっ、あははははははははは!!!やべ、グリムジョーがおかしな死神って言ってた意味分かったかも!!!あー、気が合いそうだな!!!!」

「、うん、ものすごく合いそうだね!!!」





私のどこかが欠けた気がした

























(喜助の仮面がほしくなった)








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