ローダンセを貴方に

□拾伍幕
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「……ん、」





重たい重たい瞼を開けると、いくつかの視線と重なった

私は椅子に座らされてて手足を動かそうとするとジャラリと嫌な音

頭が割れそうなくらい痛い

ああ、視界から懐かしい景色が消えてから記憶が飛んでるみたいだ

壊そうか、なんて考えたけど、目の前で楽しげに微笑む男からの視線を感じて、もう一度だけその音を響かせて動きを止める





「………目的はなんだ」

「おはよう瑞希」

「話聞けよ」

「口が悪くなったんじゃないか?」

「当たり前」

「瑞希、痛ない?その手枷きつない?」

「そう思うんだったら外せよ」

「見た目によらず中身えげつねェなァ!!」

「うるさい、誰だよ針金」

「針金!!?」

「ノイトラに賛成するわけじゃねぇけど、すげぇ姉ちゃんだな」

「よく言われる」





長い机の周りにたくさんの虚?がいた

でも人の形。霊圧は虚

それも霊圧の密度は濃い

隊長格、もしくはそれ以上

針金だったりデカイのいたり爺さんいたりお姉さんいたりヤンキーがいたり

特にヤンキーこっちガン見。そんなに死神珍しいのか

その長い机の真向かいにはギンと藍染

視界の隅には神然丸が

鬼道でもぶっぱなしてやろうかと思って、手に霊圧を込めてみたら分散されるのが分かった

………この鎖のせいかよ





「どうだい、その鎖は少し特殊で特注品なんだ」

「私をこの時代に、ここに連れてきた意味も分からない。殺したいなら殺せよ。精一杯暴れて暴れて殺されてやるから」

「さっきも言っただろう?この時代に連れてきた理由はその後の惨事に巻き込みたくなかったから。ここに連れてきたのは、……そうだな、手元に置きたかったからということにしておこうかな。あと瑞希を殺すわけがないだろう?」

「全部全部還せ」

「瑞希にあちらに加勢されては困るんだ。君の力は強大だ、君の実力には底がない」

「褒め言葉どーも」

「君にはその鎖と同じ力のが込められているこの数珠をつけて、"闘い"が終わるまでこちらで生活してもらう。数珠はいつも付けているから慣れているだろう?」

「闘い?」

「あぁ、少し話しすぎたかな。瑞希の身の回りのことは、…………そうだな、グリムジョーにでも任せようか」

「!!!」

「え、ボク違うん!?」

「ギンは特別瑞希に甘いからね。任せてもいいかな、グリムジョー?」

「………あぁ、」

「なんでグリムジョーなんだよ、俺でもいいだろ!!?」

「ボクも、興味があります、藍染様」

「…もう話は済んだのか?なら儂は帰らせてもらう」

「私もだ」

「あぁ、下がってくれて構わないよ。本当はウルキオラに任せたいところなんだが、ウルキオラはあともう少しすれば任務があるからね。ノイトラは殺すかなにかしそうだし、ザエルアポロは研究材料にしそうだろう?だから今回はグリムジョーに任せることにしたんだ。……要、瑞希に数珠を付けてやって、鎖を外してあげておくれ」

「はい」





そうすれば東仙が寄ってきて、私に真っ黒な数珠を付けてから、鎖を外した

椅子から立ち上がれば、またいろんな視線を感じる

真っ黒い死覇装とは正反対の、真っ白な衣服に身を包んだやつら

私は視界の隅にあった神然丸の方へと歩いていって手を取れば、いつもは感じる3人の声が聞こえなかった





「そうそう、その数珠には斬魂刀との対話を断ち切ってしまう能力もあってね、今の瑞希は始解すらできない。今その刀はただの刀だ」

「…………もし神然丸になにかしたなら殺そうと思った」

「さぁ、今日は疲れただろう?グリムジョー、休ませてやってくれ」

「、はい」





そこからはものすごく早かった

針金とヤンキーが消えたと思ったら、金属のぶつかる独特な音を響かせて、私の前で刀と鎌?みたいなのをぶつけ合いながら私の前に急に現れた2人

見たところ、針金の攻撃をヤンキーが受け止めてくれたらしい

瞬歩とはまた違う歩行

私にはヤンキーの背中と、針金のニヤニヤした顔が見える

なんか更木と似てるなって思った





「なにすんだよ、グリムジョー」

「こっちのセリフだ」

「気に入ったんだ、譲ってくれよ」

「俺が任された」

「いいじゃねェかァ」

「…とりあえずコイツは俺のもんだ、手ぇ出すんじゃねェ」

「!!へェ、…今回はひいてやる。じゃあな死神、また逢おうや」

「二度と私の視界に入るな針金」

「針金じゃねェ!第5十刃(クイント・エスパーダ)、ノイトラ・ジルガだ」

「くりんと?えすぱー?」

「じゃあなァ」





そう言ってさっきと同じように消えたはりが………………ノイトラってやつ

いつのまにかこの空間には私とヤンキーしかいなかった

ヤンキーはちょっとこっちに視線を向けると、私を抱きかかえて移動したみたい

みたいって言うのは早すぎて周りの景色が見えなかったから

この感覚はやっぱり瞬歩に似てる


あの瞳、どこかで見たことがある気がする

藍染に呼ばれたあの名前、どこかで聞いたことがある気がする

どこだったっけ


着いたのは、見覚えがあるところだった

白い白い砂漠に、黒い黒い空

そこに綺麗な月がひとつ浮かんでる

ここでヤンキーが私を優しく砂漠に下ろした

この沈み込む感覚も、頬を撫でる風の感覚も、すべて知ってる

目線を合わせるために、グリムジョーは私の前にしゃがみこんだ





「グリム、ジョー…………?」

「!!!」

「昔夢の中で君と同じ名前と瞳を持った虚に逢ったんだ。……でももしかしたら夢じゃなかったのかもね、この砂の感覚とか、全部を覚えてる」

「瑞希、」

「!いま、私の名前、」

「夢なんかじゃねェ、俺もお前を覚えてる。今は斬魂刀持ってやがるみてェだけど、俺を斬るのか?」

「…斬らないよ、グリムジョーはノイトラから私を助けてくれたいいやつだから」

「ッ瑞希!!!!!」

「うおうっ、」





いきなりグリムジョーが抱きついてきた

人の形をしてるけど、グリムジョーだ

私の第六感が告げてる

前は私が抱きついたのに、今は抱きつかれてるなんておかしい話かもしれない





「ここ、虚圏だったのか。じゃああの時も藍染に連れてこられたのかな。ていうかなんでグリムジョー人型なの?え、今頃になってパニックなってきた」

「……俺らは破面だ」

「あらんかる?」

「あぁ。仮面を外して死神の力を手に入れた虚のことだ。俺たちのほんとの姿と能力をこの刀に封印してる。死神の斬魂刀みてェなもんだ。あん時瑞希と逢った俺は、死神たちが大虚って呼ぶギリアンからいっこ上のランク、アジューカス。そっから俺はもういっこ上のランクのヴァストローデに上り詰めて俺たちは力を手に入れた。藍染は認めたくねェがいま虚圏の長みてェな顔してやがる」

「藍染はそんなことしてたのか…………」

「…………起きたら瑞希はいなくて、なんか知らねェけど泣きそうになった。力を求めて、また逢いたくて、」

「グリムジョーは強いの?」

「俺は第6十刃(セスタ・エスパーダ)だ」

「せすたって?」

「6番ってことだ」

「じゃあくりんとって?」

「クイントな。……5番だ」

「え、あの針金のほうが強いの!?」

「言うなっつの」

「……破面みたいにそんな強いのたくさん集めて藍染はなにをするの?」

「瑞希、それは俺からは言えねェ。悪ィ」

「うん、いいよ!あとでギ…………いち、まるあたりに聞くから!」

「藍染たちと知り合いだったのか?」

「藍染とは部下と上司、市丸とは同僚かな。私が勝手にいい人たちって信じてただけだよ」

「…そうかよ」

「グリムジョー、私は先に言っとくね。私は死神だ、尸魂界の敵は私の敵だよ。そしてここを抜け出すよ」

「あぁ。あとその数珠は無理に外さねェほうがいいぜ、ザエルアポロのやつが作ったんだ、絶対なんかある」

「うん、了解!」

「よしじゃあ俺の宮行くぞ、今日は休めよ、瑞希」

「……うん、ありがとう」





私の頭を撫でるグリムジョーの手は、手の大きさとか指の感じとか、全部が違うのに、何故か真子を思い出させた



































(わたしは、死神だ)










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