ローダンセを貴方に

□拾参幕
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「副隊長が……、」





十一番隊舎を出て、適当な路地裏に入った

帰る気にもなれなくて、壁に身体を預けながらただ進む

路地が長いのか私の進むスピードが遅いのか、出口は一向に見えない

暗い路地裏が、夜が近づいてきて余計に暗さを増していく


大好きだった真子たちがいなくて、気がついたら知らない時間の中にいて、

でも、喜助が藍染副隊長とかギンとか砕蜂とか白哉が隊長になったって聞いて少なからず嬉しかった

相手がどう思ってたなんかは知らないけど私からしたら大好きな人たちの一人だったから

そんな藍染副隊長の死

さっきも言ったけど、私たちが殺すわけない

なら誰が?

いつもサボる私を優しい笑みと少し怒ったみたいな口調で私を叱ってくれた副隊長

真子と喧嘩する私をよく止めてくれた副隊長

ギンと私にお菓子をくれた副隊長


そんな副隊長が、もういない?





「ここ、は……」





路地裏が抜けた先には丘があった

たしか五番隊のみんなで花火をした丘

丘の上にある大きな木にギンと上って怒られたっけ

昔と変わらない

変わってなくて良かった


見つかることとか、全部忘れてその大きな木に近づく

木の下にうずくまってその木に頭を預ければ、その瞬間涙が溢れてきた

涙が止まらなくなる


副隊長がもういない

真子も、白も、ひよ里も、拳西も、ローズも、リサも、ラブも、もういない、逢えない

私の日常は日常じゃなくなった

ここは私が生きてた時間とは違う


そう考えると、こっちに来てしまってからでたことがなかった涙が止まらなくなった

被ってた面が涙と鼻水で気持ち悪いことになってきたから面を外す

開けた視界に映り込んだあの時と変わらない緑

声をあげそうになるのはさすがに堪えて、ただ泣いた





「瑞希、なんで泣いてるん、?」

「!!」

「瑞希の涙は見たない、瑞希には笑顔しか似合わんよ」

「ギ、ン?」

「そう、ボク」





昔みたいに声がした

あぁ、そういや昔私が落ち込んでた時も今みたいに私に声をかけてくれたな

ギンの霊圧に反応できないのは、もしかしたら私自身がギンに昔みたいに逢いたいからなのかもしれない

こんな顔は見せたくなくて、俯いて話してると後ろから抱き締められた

ギンの薫りがする

昔とは違う、男らしくなった腕が私の視界にまた映り込んだ





「なにが瑞希をそない苦しめるん?瑞希を苛めるやつはボクが許さんよ」

「全部が、私を苦しめる。時間も、全部、全部」

「…堪忍な、瑞希。ホンマに堪忍な」

「な、んでギンが謝るの、」

「だって、」


「ギン」


「…すんません、藍染隊長」

「あいぜん、ふく、たいちょう……?」

「やぁ、久しぶりだね、瑞希」





思わず顔をあげて振り返ると、藍染副隊長が立ってた

昔と変わらない。唯一変わったのは白い羽織を着てることだけ

何故か頭のなかで警報が鳴りまくる

ただ逃げろって私の頭は言ってるけど驚いて動けない

ちょうど藍染副隊長の顔は影になっててよく見えなかった





「な、んで…………!?」

「あぁ、僕は死んだということになっていたね」

「ということは、」

「この通り、僕は生きている」

「っなんで!?」

「僕が生きていることにそんなに不満かい?」

「……副隊長が生きておられることは嬉しいです、しかし、」

「百年ぶりの再会だ。そんなことより喜びあおうじゃないか」

「隊長も相変わらず悪い人や」

「そうかい?…こんなことを言っておきながらすまない、瑞希。我々には時間がないんだ」

「え?」

「君は強い。それは認めざるおえない事実だ。だからこそ、いま動かれては困る。だから少しの間眠っておいてくれ」

「!!!かはッ、」

「瑞希、君をもう1人にはしないよ」





黒くなっていく視界のなかで、悲しそうな表情をするギンと笑顔を浮かべる副隊長だけがはっきりと見えたような気がした














































「瑞希が帰ってきてねえ………??!」





場所が変わって一護たちの修行場

一護のその言葉に、夜一は重々しげに頷いた

その言葉が聞こえていたのか、近くで休憩していた恋次も焦ったように入ってくる

瑞希という言葉に反応してだろう

そんな焦る恋次の姿に、2人は少し目を見開いていた





「瑞希姉ちゃんが帰ってねえってどういうことだよ!?」

「…そのままの意味じゃ、霊圧を探っても見つからん。阿奴に限って捕まることはないじゃろうが心配での。霊圧を消すことに関しては儂よりも長けておるからきっと敵が多くて身を隠しておるだけだと思うんじゃが」

「つか瑞希と知り合いだったのか?」

「あぁ、瑞希…姉ちゃんはよく甘味を買って俺とルキアとかに持ってきてくれたんだ」

「昔から物好きじゃったからのう、阿奴は。だから朽木ルキアと知り合いじゃったのか」

「瑞希姉ちゃんになんかあったら俺………ッ!」

「恋次…」

「…今は卍解のことが最優先じゃ。阿奴がそない簡単に殺られる奴じゃないことはお主らも知っておるじゃろう。霊圧に関しては引き続き儂が探っておく、今は卍解のことだけ考えるのじゃ」

「っあぁ!」

「(瑞希、本当になにをしておる…)」





見せかけの空を見上げた






































(沈んだ意識の中で何度も謝る声が聞こえた気がした)













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