ローダンセを貴方に

□拾幕
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 白哉SIDE





小さい頃

たまに家にくる死神がいた


名前は佐藤瑞希

小さくて子供みたいなのにすごく強いらしい

いつも笑ってて馬鹿みたいな奴だった

誰かが困ってたらすぐ駆けつけて全力で助けようとするような奴だった

そんな奴に惚れたわたしは阿奴以上に馬鹿だ

阿奴が家にくることがいつも待ち遠しくて、よく爺様にからかわれたりした

将来夫婦(めおと)となるなら、なんて夢のようなことまで考えた昔の自分



けれどある日突然消えた

忽然と

我が家も総出で探したが見つからない

落胆して、将来に意味を失って、息をする意味さえも分からなくなる日々


けれどそんな時に緋真と出逢い、緋真はわたしの総てを受け入れてくれた

わたしは掟を破ってでも緋真を朽木家に

しかし愛した緋真も、またわたしを放っていってしまった

愛する者を2度も失って、ただ人生の途中で立ち尽くす

辺りは真っ暗で幼きあの頃の輝きはどこかへ消えた



また年月が経って、生前緋真がずっと探していた緋真の妹を見つけた

緋真にそっくりの容姿


わたしは緋真の最期の願いを聞き入れ、ルキアを朽木家にまた招き入れた


しかしなんと言ってやればいいかなどわたしには分かる筈もなく、ルキアには辛い日々を過ごさせてきたと思う

瑞希ならばなんと言ったのだろうな


そんなルキアが現世任務に就いたらしい

しかしわたしの元に届いたのはある意味悲報

守ってやらなくてはとはたしかに思った

しかしわたしはあの日誓ったのだ

掟をもう破らないと

わたしは目を背ける



それから数日後、旅禍が侵入してきたらしく緊急隊首会が開かれた

そこで見た映像にただ驚く

昔見た黒髪

昔見た斬魂刀

昔聞いたあの声

面をしていても、霊圧が違ってもすぐに分かった

その後の話は全く耳に入ってくる筈もなく、隊首会が終わった瞬間一番隊舎を飛び出る

瞬歩を忘れていたくらい頭が真っ白だった


なぜいなくなったとかはどうでもいい

ただ、もう一度瑞希に逢えるという考えが頭を占めていた


霊圧を消すのが上手かった阿奴はまた霊圧を消しているらしく霊圧は感じられない

しかしなぜかここのどこかにいるような気がしてならなかった

また幼き日のあの想いが溢れ出てきたように感じる



それから数日、瑞希の目撃件数は0だった

その途中恋次が深手を負う

傷が癒えた恋次は上の空らしい



懺罪宮の方に旅禍の霊圧を感じた

瑞希の霊圧ではないらしい

行ってみると死神と志波家の者とルキア

わたしを見た瞬間死神は恐怖に顔色を染めた

手をかけようとした瞬間浮竹に止められ、そこに現世で殺したと思っていた奴が現れる

あの時よりは腕が上がっているようで、斬魂刀を解放しようとした時また止められた

今度は姿を消していた四楓院夜一

旅禍の奴と話していたかと思えば懐かしくて、愛おしくてたまらなかった名を呼んだ

急に旅禍の前に現れ、旅禍の腹に手を突き立てた

倒れた旅禍を受け止める


風に黒髪が泳いだ

探し求めていた笑顔

名前を呼べば、苦笑気味に微笑んだ瑞希

時が止まったように感じて、次に気が付いた時、旅禍を抱えた四楓院夜一が逃げようとしていたときだった

我に返って切りかかれば、簡単に受け止められた刃

こんな時にもかかわらず、風に乗って懐かしい花のような匂いがわたしの鼻孔をくすぐる





「甘い甘い、敵に動き出す瞬間がバレちゃ意味ないでしょ」

「……一体今までどこにいた」

「つい数日前まで百年前に」

「っわたしがどれだけ心配したか………!!」

「びゃ、くや……?」

「…しかし今はただの旅禍。お前を……斬る」

「今捕まるわけにはいかないんだ!だから……ごめんね?」

「!」

「満ち溢れろ、神然丸。…天技・水月」





瑞希がそう呟くと、瑞希は空気に溶けていくように消えていく

また消えてしまいそうで、またわたしを放っていってしまいそうで手を伸ばしたが、わたしの手は虚しく空を切っただけだった


































(また捕まえられなかった)







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