ローダンセを貴方に

□漆幕
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「なぁ!お願いやから逃げんとって?」





……とりあえず、なんでこうなった



モヤ…山田くんたちから別れた私は霊圧を消してどっかの倉庫に隠れてた

そしたらいつのまにか寝てたみたいで辺りは真っ暗になってて、私は無意識に倉庫の外に出てた

するとタイミング良く雲に隠れてた満月が顔を出す

真っ暗だった視界が一瞬にして明るくなった

いつもは思わない……いやたまには思うけどさ、改めて月って綺麗なんだなって思う

昔の人が"雪月花"とかいう言葉を作った意味が今はよく分かる





「!っやべ!!!」





次の瞬間知ってる霊圧をすぐ近くに感じた

こんなに近くに来るまで気が付かなかったなんてちょっと気が緩みすぎたか…!!


瞬間的に瞬歩でその場を去ろうとしたら腕を掴まれた





「あ、逃げんといてな!」





それから冒頭に戻るわけだ


声変わりしてないのか、全く変わってない声

思わず名前を呼びそうになった

でもなんだか声を出すと、ギンの顔を見るとバレてしまいそうで、私は動けなかった





「……お久しゅう、瑞希」

「!?」

「"なんでバレたんや"て思とるやろ?そんなん見たら分かんねん。霊圧が違ても、顔が見えんくても、声が聞こえんくても。なぁ、瑞希?」

「いや聞かれても分かるか!!!…………あ"、」

「変わってへんな〜」

「ギンこそ変わってないね!!?」

「あれ?もう普通にしててええん?」

「もうバレたから仕方ないでしょバーカ」





諦めてギンの手を振り払い、ギンと向き合うようにして立つ

改めてギンを見れば、昔は私の方が大きかったのにもう私の方が小さくて頭一つ分ぐらい違う

私が見上げてるみたいな感じ


次に気が付いた時、私はギンに抱き締められてた

月を背景に抱き合う私たちは端から見れば恋人に見えるかもしれないけど、そんなロマンチックじゃない





「え、」

「…逢いたかった」

「ギン、?」

「この百年間、ずっと逢いたかったし忘れたコトなんてなかった。ッんまに無事で良かった…!!」

「ギ、ン……」

「今護廷十三隊各隊長に瑞希の闘っとる映像は、いっとるよ。瑞希は顔は広いから現隊長の中にも瑞希の知り合いはいっぱいおる。斬魂刀も映っとった、ボクと同じように一瞬で分かった奴もおる、ソイツらは今血眼になって捜しとるよ」

「……何が言いたいの」

「今ボクに捕まったらもう楽や、闘わんでええ、瑞希がほかの隊長に逢うて怪我すんのは見たないねん。なぁ、ボクに捕まってぇや」





ここで背中に回っていたギンの腕が腰まで下りてきて、顔が普通に見えるようになった

逃げようとしても力が強くて逃げれない

おい!腕に青筋立つくらいなら諦めろバカ!!


それから片手で狐の面を取られた

カタ、という面が落ちる乾いた音が響く

狭まっていた世界が急に広がって、ギンの綺麗な水色の瞳が私を射抜く





「相変わらず綺麗な肌しとる…、」

「人のこと言えないでしょうが」

「目も、髪も、身体も、ほかの女とは比べものにならへんぐらい綺麗や」

「……ホント何したいの。昔からギンの考えてることは分かんないよ」

「そない?分かりやすい言われるねんけどな」

「絶対ウソ。……ギン、私はしなきゃいけないことがあるから今はムリ、捕まれないよ」

「おん、知っとるよ」

「……は?」

「だから知っとるって、そんなん一回言うて瑞希が捕まるなんて考えてへんよ。…だから危ななったらボクを呼び?いつでも助けに行ったるから」

「でもその羽織り、隊長になったんでしょ?ダメじゃない」

「瑞希のためやったらこんなん気にせえへんよ」

「いや私が気にするから」

「……ほなボクはそろそろ行くわ、ここで逢うたんは2人だけの秘密な?」

「んっ、」

「ほなな」





ギンは私の額にキスを一つ落とし瞬歩で消えていった

私は額に触れる


あれは何をしに来たんだろう










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