ローダンセを貴方に

□零幕
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「はっ、はぁ…!!!」




怖い怖い怖い

あの時の私にはそれしかなかった

後ろから追いかけてくる恐ろしい怪物

家族も友達もみんな、みんな食べた怪物

ただ恐怖した


降り続ける雨で視界も悪いし、雨の音以外全く聞こえない

1つ聞こえるものとすれば、
それは怪物の唸り声だけ



私は無我夢中で逃げた


どれだけ逃げたかも分からない


途中で草履は脱げても逃げた

途中どれだけ身体中が悲鳴をあげてもただ逃げた




「あぁっ!ッ…」





考え事をしていたからか
足元にあった石に気づかず、盛大に転んだ

立ち上がろうとしても今になって腰が抜けてしまって立ち上がるコトができない






『もウ終わりダ、小娘。家族とやラのいる所に行かシてやロうぞ』


「やっやだッ…!!誰か、誰か!!!!!」





最期を悟った

振り上げられた怪物の手に、
私は目を閉じてその瞬間を待った





『…ヒギャァァァア!!!!』

「…ぇ…?」




でも次に目を開けた時見えたのは、
飛び散る怪物の血抹消とそれに正反対な白い羽織り、消えていく怪物





「もう大丈夫ッスよ!」





それとこの天気には不釣り合いなほど輝いてる太陽みたいな微笑みだった










終わり

終わり


(永い間降っていた雨が)
(いつの間にか止んでいた)








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