大空少女。
□9話目
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着いたのはホテルみたいな建物だった
けどうろついてるのは黒服ばっかりだからきっと日本のヴァリアー支部だろう
それで、そのままスクアーロに装飾されている大きな扉の前に連れて行かれた
たぶんここが兄さんの部屋かな
兄さんは私達より一足先に帰ったからもう部屋にいると思うし
ここに来るまでの間、下っ端ヴァリアーにいっぱい見られた
でも、私のフルーレの柄のサファイアを見た瞬間すごいスピードで顔を逸らされたから、通り名ってすごい
「う"ぉ"お"おい、ここがXANXUSの部屋だぞぉ」
「やっぱり?ていうか私が入っていいの?兄さんが呼んだわけでもあるまいし」
「いいんだ、桃子だからなぁ」
「入った瞬間ウイスキーの瓶投げられたらどうしよ、スクアーロみたいに」
「アイツがお前にそんなことするわけねえだろ!つーか一言多いぞぉ!!」
「兄さん、入るねー」
「う"お"ぉぉおい!!!無視すんなあ!!!!」
無言は肯定と取る
重たそうな扉を開けた瞬間、なにかが飛んできたから反射で避けた
そしたら後ろで私に叫んでたスクアーロの叫び声
振り向いてみたら眉間にジャストミートで直撃したみたいで、眉間を両手で抑えてた
床には投げられたであろうワイングラスが落ちてる
さすがヴァリアー
兄さんが投げてもいいように割れないやつを使ってるなんて
兄さんは私たちの会話を聴いてたのかな
あえて違うものを投げてくるあたりさすがだ
後ろで悶えてるスクアーロは無視して中に入れば、これまた高そうなベッドに腰掛けながらウイスキーを飲んでる兄さん
絵になってるからすごいなあ
「どうしたの、兄さん?」
「……何年ぶりだ」
「あの事件以来かな。兄さんの目が覚めたっていうことは本部からまわってきたし」
「なんで連絡をよこさなかった」
「目が覚めたのに、兄さんかスクアーロが私に連絡しなかったってことは今はされたくない状況なのかなって」
「フン、ますます使えるやつになったじゃねえか」
「そうなるしかなかったし、私が望んだから。…会いたかった」
「…」
兄さんは私の腕を黙って引き、抱きしめた
不意打ちではあったけど、私は拒むことなく兄さんの胸に倒れ込む
香水なんてつけてないのに、なんでこんなにいい匂いがするんだろう
ウイスキーとはまた違う匂いにくらくらした
強くもなく、弱くもなく
ただ優しく抱きしめてくれた
「…まだあの老いぼれを信じるのか?」
「(あぁ、これを話すために私を呼んだのか)
おじいちゃんは私の恩人だよ。裏切るなんてできない」
「こんな惨い事をお前にさせるのにか?」
「私がツナの守護者になること?」
「……」
「これは私の運命なんだよ、きっと。なら私はそれに従うだけ、変えられないのはとうの昔に分かってることだよ」
「……辛かったらいつでも来い。あのカスも、ヴァリアーは全員がお前の味方だ」
「兄さんがいてくれて良かった、生きててくれて本当にありがとう。…だからこそ、兄さん達と闘いたくないよ」
「…カスの所に行ってやれ」
「うん」
私はゆっくりと兄さんから離れる
兄さんは私のピアスを少しの間、寂しそうに見つめてた、そんな気がする
けど私はそれに気付かないふりをして扉の方に向かった
おじいちゃんも裏切りたくない、ツナも裏切りたくない、兄さんも裏切りたくない
そんなわがまま言ったら兄さんは無理矢理でも私を連れ去ってくれるだろうから口が裂けても言えるわけない
「またね、兄さん」
私は静かに扉を閉めた