D家の妹さん
□19章目
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「「……」」
「…こんちゃーっす」
「言葉は正しく使え。『こんにちは』だろう」
「分かりました、分かりましたから!!なのでその手を いででででっ!!!!」
放課後、さきが帰ろうとしていた時だった
正門に向かって廊下を歩いていると、さも少女マンガかの様にある人物と交通事故が起こった
(さきにとっては、その日1番の不幸だろう)
さきはその人物を見た瞬間逃げ出そうとしたが、その前に襟元を掴まれ、逃走不可能となる
その人物とは、赤毛で綺麗なエメラルドグリーンの瞳を持ち、額に『愛』の刺墨を持った少年…―もとい我愛羅だった
「気のせいか、前にもこんなんあったような気がします!」
「安心しろ、気のせいだ」
「先輩の悪魔!!」
そのままさきの襟元を掴んだままどこかへ連れて行った
その間叫びまくっていたさきは、最後らへん激しくせき込んでいたそうだ
「お、連れてきたのか」
「あぁ。廊下でばったり会ったものでな」
「先輩方!こういうのは『連れてきた』じゃなくて『拉致』って言うんです!」
「何ヶ月も部活に来ていないくせに、よくそんな大きい口が聞けるなぁ?」
「ひっ…!!すいませんっした!!!!」
テマリの悪人面に、さきは思わず小さな悲鳴を上げた
さきはもともと帰宅部に入る予定だった
…いや、入るというものではないがこの際スルーだ
しかし入学したての頃、さきはふと美術室を覗いてみた
本当に偶然だったのだ
そして、部屋に置いてあった彫刻にただ見入った
さすがデイダラの妹だろう
芸術家の血が騒いだのか、目を離せなくなったのだ
我愛羅の作品だった
流れる砂をそのまま描いたような彫刻で、誰が見ても感嘆を漏らすぐらい美しかった
それに見入っていた現場を我愛羅たちに目撃され、その時は何も考えられなかったのだろう、さきはその場で入部を志願した
そして今に至るわけだ
「さき、お前はやればできる子なんだ!」
「先輩は私のお母さんですか?てか私は見るの専門なんです!作るのは専門外ですよ!」
「バカ言えじゃん!デイダラ先輩の妹がそんなワケないじゃん!」
「兄さんと私は違います」
「でもお前にも才能があることは分かっているんだ。でなければ高2の部で最優秀賞に選ばれなんかせん」
「あれはただの偶然です」
そう、さきは自分の絵で一度高2の部で最優秀賞に選ばれているのだ
審査員はベタ褒めだったらしい
しかしさきはそれを偶然と言い張る
我愛羅たちからすればたまったものじゃない
「そろそろ自分の才能を認めろ、さき!」
「私に才能なんてありませんって!あるのは喧嘩がちょっと強いってぐらいです!」
「それ自慢しちゃいけないじゃん!?煤v
「私にとっては自慢の対象です。てか私帰りたいです、今日はドラ○もんの再放送なんです」
「はぁ?!ちょっと買い出し行ってこい!絵の具が足りないんだ!」
「ド○えもんは?!」
「高2にもなって、お前は幼稚園か」
「ドラえ○んは全世代に大人気で、今や世界的にもその名を知らしめてるんですよ!?」
「知らしめてるって、ドラえも〇を不良みたいに言うんじゃないじゃん!」
「そっちなのか?…まぁいい、我愛羅!ついていってやれ!」
「!俺がか?」
「さきがサボらないようにだ。お前がいれば絶対サボらないだろうからな」
「後輩信じてないんですか?!」
「今まで15回もこのまま逃げた奴を信じられるか!」
「…否定できないのが悔しいです」
「ほら行ってこい!」
「「うわっ/!!」」
「さきにアピールしてこいよ?」
「な"っ!//」
さきたちの背中を押し出し、ムリヤリ美術室から追い出すテマリ
しかし追い出す瞬間、テマリは我愛羅の耳元で囁く
その言葉に、我愛羅は顔を髪と同じくらい真っ赤にさせた
扉が閉まる隙間から、テマリとカンクロウのニヤつき顔がチラと見えたのは目の錯覚ではないだろう
「(アイツら……)」
「?先輩、どうしたんですか?だいぶ怖い顔してますけど…」
「!いや何でもない」
「それじゃあ早く行きましょう!○ラえもんが終わります!」
「あぁ」
さきの笑顔でイラつきが消えたのか、我愛羅の眉間の皺が薄くなる
そしてさきが走り出したので、我愛羅も少し頬を緩ませながら後を追った