連れ出しませう?

□2話目
2ページ/3ページ






少し走ると、ある建物の前で車は止まった




「お日さま、園…?」

「そうよ。ちょっと待ってなさい」




母親はそう告げ、建物の中に入っていった






-----






あれから数十分待ち続け、やっと戻ってきたかと思えば母親は少し嬉しそうに車のドアを開け、紗奈を呼んだ

紗奈が車から降りると、母親は建物の中に紗奈を連れて行った

そしてある部屋の前で止まり、母親は持っていた大きなボストンバックを紗奈に持たせそのドアを開けた




「先程言っていた紗奈です。紗奈、自己紹介しなさい」

「源田紗奈です…」

「ほう…、可愛らしい子ですね」




その部屋には栗のような頭をした男がいた

一見優しそうだが、裏がえげつなさそうだ




「ではよろしくお願いいたします」




母親は男に頭を下げると、部屋を出て行く

そして紗奈も母親について行こうとするが、男の近くにいた女性に抱きかかえられそれを止められる




「お姉さん、離して!私お母さんを追いかけないと…!」




そう紗奈が言うと、女性は少し悲しそうな顔をするが、すぐに何かを決心したように紗奈に話しかける




「…よく聞いて、紗奈ちゃん」

「?」

「貴方は…、捨てられたのよ…」

「!」

「ここはお日さま園っていって、孤児を預かる場所なの。」

「私…、捨てられたの…?」

「…そうよ、」

「…そっか!!」

「ぇ…?」

「私分かってたんだ、きっと私は捨てられるだろって…!
私毎日お母さんに蹴られたり、殴られたりされてたんだ…っ!」

「?!」




明るくそう話す紗奈に女性は驚愕する




「だから悲しくなんてないよ…!!」




女性はただ驚くしかない

我が子を捨てることさえあり得ないのに、増してやこんな幼い子を虐待?

最低にも程がある




「改めて、源田紗奈です!よろしくお願いします!」




笑顔の紗奈に圧倒されながらも、男と女性も自己紹介を始める




「わたしは吉良星二郎です。ここの園長をしています。わたしのことは父さんとでも呼んでください」

「私は娘の吉良瞳子よ。よろしくね、紗奈ちゃん」

「よろしくお願いします!」

「じゃあ皆の所に案内しましょうか」

「皆?」

「そうよ、ちょうど貴方と同い年辺りの子たちよ」

「…友達になれるかな?」

「大丈夫よ、きっと。…じゃあ行きましょうか」




そう言って女性、もとい瞳子は紗奈の手を引き部屋を出た






次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ