連れ出しませう?

□1話目
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自室に帰った紗奈は真っ先にベッドに飛び込んだ




「なんでっ…、なんで私が蹴られたりされなきゃいけないのっ…!」




紗奈はベッドシーツを強く握りしめ、唇を噛み締める

そして静かに泣き始めた

その姿は幼い少女とは思えない程、大人びていた




『おーい、紗奈!』

「!」




急に聞こえた兄の声に少し肩を震わせ、慌てて涙を拭う




『開けていいか?』

「ぁっ…、うん!」




扉が開くとそこには兄、幸次郎のほかにもその友達の鬼道有人と佐久間次郎も立っていた

鬼道と佐久間はよく源田と遊ぶため、必然的に紗奈と仲が良かったのだ




「紗奈、遊ぼーぜ!」

「次郎くん、有人くん…」

「?どうした?体調でも悪いのか?」

「なっ、なんにもないよ…!」




鬼道は紗奈が元気がないのに気付いたのか声をかけるが、紗奈が何もないと言うので不信ながらも納得する




「それで、遊べるか?」

「…今日はちょっとやめとくよ。ありがとう、また誘ってね?」

「そうか…?分かった!じゃあまた今度な!」

「うん!」






君を見た最後の日。

(少年たちは知らなかった、)
(次に少女に会えるのは何年もずっと先の事を)







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