連れ出しませう?

□6話目
1ページ/1ページ






「来てくれましたか」

「父さん、…」




中には星二郎とひょろ長い、怪しげな男がいた

そして2人の後ろには今までなかったはずの大きな石のようなものがあった

その大きな石のようなものを囲むようにしてたくさんの装置が置かれている




「その人誰…?」




クララがひょろ長い男を指差す




「あぁ、こちらはわたしの秘書の剣崎くんです」

「…どうも」




剣崎の第一印象は怪しい男
子どもたちは見るからに顔をしかめている

ヒロトは本題に入った




「僕たちを何で呼んだの、父さん…?」

「そうでしたね…」




ヒロトの言葉に、星次郎は口元をこれでもかというほど歪ませた

しかし対照的に目元は全くといっていい程笑っていない

そして静かに口を開く




「アナタたちはアナタたちを捨てた親が憎くありませんか…?」

「「?!」」

「わたしはそんな子どもたちのためにエイリア学園をつくりました…!!」




紗奈たちは目を見開く

今の星二郎に、いつもの優しそうな面影はなかった




「エイリア、学園…?」

「はい。宇宙人のための、ね?」

「宇宙人…?」

「!まさか」

「気付いたようですね、風介。そうです、アナタたちが宇宙人です」

「父さん!俺たちは人間だぜ?!」

「そんな事は知っています。アナタたちは宇宙人になり、サッカーで人間に復讐するのです」

「サッカー、で…?!」

「やめて、父さん!!!」




サッカーという言葉を聞いた瞬間、皆の顔が青ざめていく

紗奈は一生懸命反発した




「サッカーはしている者たちを笑顔にすることができる素晴らしいスポーツなの!!
お願いだからサッカーをそんな事に使わないで、父さん!!!」

「そんなこと、ですか…?」

「ひっ…」




一瞬だが、吉良の目がとても鋭くなり、紗奈は思わず小さな悲鳴をあげる

そんな紗奈に満足したのか、星次郎は話を続ける




「サッカーなので、まずチーム分けを行います。チームはランク毎に分けます。
ランクは上からジェネシス、マスターランク、ファーストランク、セカンドランクです」



「まずセカンドランク、ジェミニストーム。キャプテンはリュウジ
メンバーは玲於、章介、出郎、義郎、聡里、希望、宇宙、駿太郎、理夢、大夢です
ファーストランク、イプシロン。キャプテンは治
メンバーは健一、留美、圭介、太二、虎彦、風子、蜂郎、マキ、論、隆一郎です
マスターランクは3つチームがあります
まず1つめはダイヤモンドダスト、キャプテンは風介
メンバーはクララ、寒太郎、徹、由紀、一角、修児、愛、蓮、冬司、雫
2つめはプロミネンス、キャプテンは晴矢
メンバーは蔵人、華、激、茂人、夏彦、幸太郎、数男、杏、穂香、丞
最後にガイア、キャプテンはヒロト、いきなさい
メンバーは君之、隆則、布美子、半蔵、剛太、恭馬、ルル、聖、由宇、玲名
以上です」

「!父さん!私は…?!」




ここで紗奈は自分がどこにも入っていなかった事に気づき、思った疑問を声に出してみる

すると星次郎は思い出したように手を打った




「あぁ、そうでした。アナタを忘れていた…
アナタはジェネシス、ジェネシスキャプテンです」

「!私、がジェネシス…?」

「ちょっと待てよ、父さん!紗奈1人じゃサッカーなんてできねぇじゃねぇか!」

「これから決めていくのですよ」

「「は…?」」

「簡単な事です
この中で強いチームがジェネシスになるのです。または紗奈がテストをして強いと思う人たちを引き抜いていけばいいでしょう?
アナタが全てを決め、頂点に立つのです、紗奈」

「私はそんなことっ…!」

「いいえアナタならできます
あとアナタたちは今日からこのペンダントをつけてください」




混乱している紗奈をよそに、星次郎は話を進めた

星次郎は剣崎に合図し、全員に紫色の石がついたペンダントを渡していく




「これは…?」

「アナタたちにもわたしの後ろにある石が見えるでしょう?そのついている石はそれの一部です。名はエイリア石といいます」

「エイリア石って…?」

「身体能力を格段にあげます。姿などが少し変わりますがほかに異常はありません」



「(ピクッ」




身体能力が上がると聞き、恐る恐る皆ペンダントを首に下げていく

すると首にかけた瞬間皆の顔つきが変わる




「なんだこれは…」

「力が、漲ってくるようだ…!」

「スゴい…」




さっきまでは反対していた者も、エイリア石の効果で身体能力が上がった事が分かりそんな事を忘れている

皆がつけていくので、紗奈も恐る恐る首にかけてみる




「…?」




しかし目を閉じて、衝撃を待ってみても全く何も感じない

壊れているのかと思い、首を傾げている紗奈に吉良は話しかける




「紗奈、アナタは元々身体能力が高いので、あまり変化がないのかもしれません。
しかしいつ変化が起こるかも分からないのでペンダントはしておいてください。姿の方も、心情などで変わるかもしれません」

「…はい」

「最後に、本名では人間だとすぐに分かってしまいます。なのでエイリアネーム…、ニックネームのようなものを考えておいてください
では以上解散。チーム毎にグランドなどは用意しておきました、そこで練習をしなさい」




そう言って星次郎と剣崎は奥の部屋へと消えていった

残された紗奈たちは、ただ呆然と立ち尽くす

しばらく沈黙が続く

しかしそれを破ったのは意外にも晴矢だった




「…紗奈はさ、どうすんだよ?」

「はっ、晴矢は…?」

「…俺は従うぜ」

「?!本気?!」




紗奈はそんな晴矢を信じられないという様子で見ている




「俺は力が欲しい!!この前の紗奈のサッカーを見て、本当にそう思ったんだ…!皆はどうなんだよ?!」




晴矢の声に、今まで黙っていたほかの皆も口々に呟き始める




「おっ、俺も…!!」

「私も力が欲しいわ」

「紗奈に勝ちたい!」

「力が欲しいんだよ!!」

「み、んな…」




紗奈が大好きな杏でさえ、その皆の1人だ




「紗奈、わたしたち皆、復讐などではなくただ本当にサッカーがしたいんだ…」




治が紗奈の前に立ち、小さく呟く




「俺も復讐なんかしたくねぇっつの!」

「けどサッカーができなくなるのも、ね…」

「夏彦、茂人…」

「紗奈、俺たちはサッカーを汚したいわけじゃないんだ。お願いだからそれだけは分かって…?」

「リュウジ…」

「紗奈、復讐なんかじゃなくてサッカーをしようぜ、俺らはな?」

「…うん!そうだね!」




そして紗奈の言葉を合図にするかのように皆は笑顔を浮かべながら各々のグランドへと走った





始まった。

(星次郎が怪しく微笑んでいたこと)
(それを知るのは輝くエイリア石のみ)





 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ