連れ出しませう?
□3話目
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「ちょっとここで待っててくれないかしら?」
「うん」
子供の笑い声や叫び声が聞こえる部屋の前で2人は止まった
そして瞳子が紗奈に部屋の前で待つよう促し、紗奈が頷いたのを見ると瞳子は部屋に入っていった
『あっ、瞳子姉さん!!』
『今日は新しい仲間を連れてきたのよ?紗奈ちゃん!』
「あっ、はいっ…!!」
紗奈は緊張しているようで、まるでロボットのような歩き方で部屋に入ってきた
それを見た子供たちは何人かフいていたが、今の紗奈にはそれすら気がつかなかった
そしてやっとの思いで瞳子の横まで行くと、すぐさま瞳子の後ろに隠れた
「あらあら…。この子が今日から貴方達と暮らす紗奈ちゃんよ。紗奈ちゃん、自己紹介頼めるかしら?」
紗奈はまたロボット歩きで瞳子の横に立つと、顔を真っ赤にさせながら自己紹介をし始めた
「はいっ…!
源田紗奈です。これからお願いしまひゅ…」
「「…」」
噛んだ
紗奈は最後の最後で噛んでしまった
子供たちは唖然として紗奈を見つめており、紗奈は恥ずかしさから顔を先程以上に真っ赤にし、唇を噛み締めずっと俯いている
「ぷっ…」
「「あはははは!!」」
「ぇ…?」
誰が吹いたかは分からないが、それが合図かのように皆が一斉に笑い出した
それを紗奈はスゴく驚いたような顔で見る
「お前、面白ぇな!!」
「え?え?」
紗奈はほかの子供たちに肩を叩かれたり、頬をつつかれたりやられたい放題だ
しかし当の本人は何がなんだか分かっておらず頭にクエスチョンマークを浮かべているばかりだ
「ほら、貴方達も自己紹介なさい」
瞳子の一言で皆が一斉に自己紹介を始める
「俺は南雲晴矢!よろしくな!」
「わたしは涼野風介だ」
「僕は基山ヒロトだよ!」
「俺は緑川リュウジ!よろしく!」
「砂木沼治だ」
「貴方可愛いっ!!」
「お前はどこぞのナンパ男か
私は八神玲名、こっちは蓮池杏だ」
「倉掛クララよ!よろしく!」
「私は凍地愛!愛って呼んでね!」
「わたしは愛の兄の凍地修児といいます、よろしくお願いしますね」
「俺は熱波夏彦ってんだ!よろしくな」
「俺は厚石茂人だよ、よろしくね!」
「えーっと…、」
「皆、いっぺんに言い過ぎて紗奈ちゃんが混乱してるじゃないの
紗奈ちゃん、ゆっくり覚えていったらいいわよ。あと、この子達以外にもまだたくさんいるからまた後で挨拶しに行きましょうね?」
「ぁっ、ありがとうございます…!」
紗奈が戸惑っていると助け舟を出してくれた瞳子
紗奈は安心したようにため息をつく
すると紗奈は思い出したかのようにつけ加えた
「あと私のことは紗奈って呼んでください!」
「うん、もちろん!私たちのことも゙ちゃん"とがくん"とかいらないからね?あと、敬語なんて使わないで?なんか他人みたいじゃない!」
「そうだぜ!俺達はこれから家族になるんだからそんなのいらねーよ!」
「家、族…?」
愛と夏彦がそう言うとまたクエスチョンマークをつける紗奈に、何か言おうとした晴矢をはね退け、ヒロトが紗奈の前に立ち、笑顔で言う
「僕たちはこれからここでお互いに助け合ったりしながら一緒に暮らすんだよ?
なら家族って呼んだっていいじゃない!紗奈がそう思わなくても僕たちは家族だと思って暮らしていくよ!」
「紗奈は、嫌なのか…?」
ヒロトの話を聞いている間ずっと俯いていた紗奈に気付いた風介が紗奈に声をかける
その風介の声掛けに顔を上げた紗奈は、瞳に涙を浮かべていた
「どっ、どうかしたのか…?!」
「いや、家族って言ってくれた事が嬉しくて…!」
紗奈は涙を服の裾で涙を拭いながら苦笑気味で話す
「ぇ…?」
「…私、お母さんに殴られたり蹴られたりしてたんだ」
「「?!」」
これには子供たち全員が驚いた
こんな自分たちと年の変わらない子が虐待を受けていたなんて考えられなかったのだろう
「正直毎日生きてる感じがしなかったし、いつも1人だった。
だから嬉しいんだ!皆と暮らせて、家族って呼んでくれて!!」
「紗奈…。…紗奈がっ、紗奈が嬉しいんなら俺はいくらだって家族だって言ってやる!だから笑えよ!女なんだから笑った方が可愛いに決まってるだろ!!」
「晴矢…、」
「わっ、私だって晴矢に負けないぐらい紗奈を笑わせてみせるんだからっ…!」
「んだと?!」
「いや、杏は主旨変わってるの気づいて?」
こんな漫才のようなやりとりが始まったが、すぐにリュウジのツッコミが入る
そんなやりとりを見ていた紗奈は1人吹いた
「ぷっ…」
「?どうしたんですか?」
「いや、なんか面白いなぁって…。
じゃあ改めてよろしく、皆!!」
「「!!!」」
すまいるNO.1!
((ちょっ、コイツスゲー可愛くねぇ…?//))
((いやアンタが言ったんでしょ))
((((……でも本気で可愛い))))