連れ出しませう?

□1話目
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9年前_





「あんたなんて生まれてこなければよかったのよ!」




ある家で、ある女性が女の子の腹を遠慮もなしに蹴っていた

世に言う“虐待”というものだろう

蹴られた反動で見え隠れする女の子のお腹や、普段服で見えないような所は全て痣などで塗り尽くされており、本当の肌の色さえ分からない程だ




「かぁっ…さ、ん…っ!」

「貴方に母などと呼ばれたくないわ!」

「かはっ…!」




女の子は身体を丸めてはいるものの抵抗をしないのは、相手が仮にも母親だろうからか、それとももう抗う気力さえないのだろうか




「幸次郎も幸次郎の友達も…、全員、全員貴方が嫌いなのよ!!」

「っげほっ、げほっ…!」




少女は何故こんな暴行を受けていることでさえ分からないぐらい幼いだろう

ただ少女にも分かる事は、自分の母親は自分を愛していないという事

だんだん女性の蹴る力も強くなってきて、女の子…もとい、源田紗奈の意識も朦朧としてきた時にタイミング良くチャイムが鳴る




「ただいま!」




そのチャイムの主が、自分の愛する息子だと分かると、女性は蹴り続けていた足を休め、紗奈の顔すら見ず告げる




「チッ…今日はもういいわ。早く部屋に戻りなさい」

「は、い…」




紗奈は乱れていた髪と服を整え、兄にその姿を見られない様にそそくさと自室がある2階への階段へと急ぐ

ふと階段を登ろうする時に見えた自分の母親の顔は先程までとは全く違う、優しそうな笑み浮かべながら兄を出迎えていた

紗奈は少しの間その母親の表情を呆然と見つめていたが、すぐに階段を駆け上った






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