ローダンセを貴方に

□拾弐幕
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「警備手薄だなー」





地上に出て十一番隊舎に向かう

場所は変わってないらしい

その途中はあんまり隊士たちはいなくて、無駄な労力は使わないでよさそうだ

けれど堂々と道の真ん中を行くのも馬鹿みたいだから少し物陰に隠れて隊士たちの霊圧を探ってみる

これならまだ楽に行けるな

そう思って踏み出そうとした瞬間、後ろから突然伸びてきた手が私の口を塞いだ

思わず神然丸を抜こうとすると、頭の少し上から声が聞こえて手を止める

なんだか煙草と薬品が混ざったような臭いがした





「元気そうだな、瑞希」

「!!ん"ー!!!」

「さすがにわかんねーか、俺は阿近だ。手離してやるから叫ぶんじゃねーぞ?」





何回も頷けば、ゆっくりと大きな手は離れた

少し息を整えながら振り向くと、そこには私が見上げなきゃいけないくらい大きくなった阿近

片手には煙草で、死覇装の上に白衣を着てる

所属隊は変わってないらしい

喜助のとこにサボりに行ったときはよく話してたりした

でも今は敵だ

私が少し距離を取って神然丸に改めて手をかければ、阿近が両手を上げて軽く振った

これじゃあまるで、





「安心しろ、捕まえたりなんかしねーよ」

「え、」

「隊長についての報告の帰りにまさか逢えるとは思ってなかったな。相変わらず元気そうだ」

「あっ阿近は護廷十三隊だよ!?なんで私を捕まえないの?!なんでそんなに普通なの?!」

「なんだ?捕まえてほしいのか?」

「!そんなわけないじゃん!」

「悪いが瑞希を捕まえれると思ってるほど自惚れちゃいねーんでな。まぁ頭の方でなら負ける気はしねーけどよ。それに今聞いてもどうせ後でって言うんだろ?」

「そ、そうだけど、」

「言っちゃいけねーだろーが、朽木は絶対瑞希と旅禍が助けるだろーよ。…だからこれが終わったら全部俺の気が済むまで聞く、だから捕まんじゃねーぞ」

「っもちろん!」

「そんでこそ瑞希だ。あとこれ持ってけ」

「数珠?」

「霊圧を少し変えてたみてーだが、それはもうバレてる。これでまた少し変えれるから付けとけ、まだ混乱はさせれるだろ」

「そんなに協力してくれていいの?もしバレたら、」

「俺を誰だと思ってんだ。あと言ったろ、俺は瑞希の消えた理由を知りてーから捕まってもらっちゃ困るんだよ」

「!うん、じゃあ行くね!」

「おぉ、早く行け」





昔と変わらない、なにか悪巧みを考えてそうな笑み

これだけは変わってないらしい


隊士がいないのを見計らって十一番隊舎まで瞬歩で急いだ

音がしないように屋根の上に飛び乗れば、すぐに織姫の霊圧を感じる


ここでふと思い出す

たしか十一番隊ってさ、アイツいなかったっけ?


身震いがしてもう一回作戦立てようと瞬歩で消えようとした時、聞きたくなかった声が聞こえた




「おねーさん!」

「やべっ、」

「逃げたりなんかしたら追いかけちゃうよー?」

「脅しだ!!」





振り向くと、そこにはとっても笑顔のピンク髪の女の子がいた

なんか最後のドスがきいてた気がする

手招きされたから仕方なく女の子のところまで向かえば、近くにいたこれまた顔が濃いおじさんが口をパクパクさせながらこっちを見てた

そんな見ないでほしい





「剣ちゃんと闘いに来てくれたの?」

「そんなわけねーだろ。織姫、って子いる?その子探しに来たんだけどな、はっ、ははっ」

「いるよー!こっち!!」

「!ぁ、ちょっ!!!」





ヤバい。これは本気で危ないパターンだ

女の子が私の腕を引いて隊舎を走っていく

この先に織姫がいるのは霊圧で分かる。けど一緒に、更木と何人かがいるのも分かる

逃げたいけど女の子を無理矢理振りほどくのも気が引けるし、なにより力がものすごく強いから振りほどけない

顔が青ざめていくのが自分でも分かった

あ、あの部屋の中にいる

女の子が襖に手をかけた

アーメンアーメン南無阿弥陀仏

どうか私のことを助けやがれですます、神様


けれど願いは届かなかったみたいで気持ちいいくらいいい音と共に襖は開かれた

視線がいたい





「瑞希さん!!?」

「あ?テメーは………」

「織姫無事だね?よしじゃあ帰ろうかお邪魔しました失礼しましたー」

「え、あっ!」

「ちょっと待てよ」

「………まずとりあえず、刀は投げるもんじゃないよ」

「ハッ!さすがじゃねェか!」

「隊長の言ってた…」





投げてきた刀を神然丸で跳ね返す

その刀は更木の頬に赤い線を作って壁に刺さった

改めて見てみれば、更木とハゲとオカッパ

今気づいたけど、たしかハゲとオカッパは一護たちが乗り込んだ最初あたりにぶつかってた霊圧だと思う、たぶん

更木のニヤニヤ顔が少しイラつく





「…織姫、コイツらはいま斬った方がいい奴ら?」

「ううん!この人たちは私を助けてくれたの!」

「そういうことだ」

「うんよし分かったじゃあ帰ろ「待てって言ってんだろ」…なに?」

「お前はあんときの一護を助けた奴だな?」

「いいえ人違いです」

「一護も瑞希って呼んでただろ」

「同姓同名です」

「俺をなめんじゃねェよ、匂いで分かるんだ」

「え、私汗くさいかな?」

「強い奴のにおい。殺すことに躊躇なんかねェ、俺たちと同じにおいだ」

「、私は君みたいに闘いが好きじゃないんだけどな」

「佐藤 瑞希だな?」

「もう名前まででてるのかー。…でも捕まえないでしょ?」

「なんでそう思う?」

「そうしたら私と闘えなくなるから。最近の護廷十三隊は怠けてる奴多いねー」

「ハッ、分かってんじゃねェか!!!とりあえず座れや、女も」

「………5分で済ませろよ」

「十分だァ」





織姫はさっき座ってた椅子に座ったけどさ、椅子はいまそれと更木が座ってるやつとハゲとオカッパが座ってる長椅子しか部屋にはなかった

ハゲとオカッパの横に座るのはなんか嫌だったから床に座ろうとしたらハゲに手を引かれて長椅子に座らされた

思わずハゲをガン見してたらすごい勢いであっちを向いたハゲ

オカッパ、なに笑ってんだ





「…隊長と勝負したって本当かい?」

「ほんの数秒だよ」

「こっちは弓親で、隣が一角だ。お前ら今度相手してもらえ、すぐやられんぞ」

「そんなにですか?」

「ないから安心して」

「そういや藍染を殺したのはお前か?一護か?」

「……は?」

「だから、」

「違う、副隊長が、死んだ?」

「副隊長?」

「お前らが殺したんじゃねーのか?そう出回ってんぞ」

「そん、なわけないじゃないか、私たちがするわけない、」

「?どうしたんだ、いきなり?」

「…いやなにもない。敵じゃないなら織姫を任せていいか?私たちと来るのは危ないから」

「俺たちと来る方が危ねェんじゃねェのか?」

「…いやそっちの方がいい。ちゃんと守ってやれるかも分かんないしな」

「じゃあ交換条件だ、…また闘ってくれんだろ?」

「今回はちょっとやっただけじゃないか」

「黒棺なんて初めて受けたぜ、さすがにやべェかと思ったわ」

「黒棺ってあの、破道九十番台の、?!」

「あぁ、それも詠唱破棄だぜ?」

「はぁ!!?」

「んじゃこれで、」

「え、ちょ、」

























(瑞希さんってそんなにすごかったんだ、)

(なんで、副隊長が、)






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