テニプリ

□ばいばい、またね
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待てよ、
待って下さいよ先輩達。




















桜の木が蕾をつけた頃だとか、そんな決まり文句をつらつらと並べていく先輩達。


そう、今日は卒業式。


卒業式と言うことは、三年の先輩達が学校を去るってことだ。
三年の先輩ってことは、俺以外のテニス部レギュラー全員。


俺は二年だから当たり前だけど卒業はしない。し、出来ない。

今、座ってる席も卒業生と在校生は違う場所。



卒業式は一番前、俺ら在校生は卒業生からちょっと離れた後ろ。


たったそれだけなのに、何もかもが違く感じる。



俺が今、何してるかって言うと泣いてるわけでも笑ってるわけでもなく、ただ卒業する先輩達を見つめていた。







あ、丸井先輩ガム噛んでる。
仁王先輩は…どこ見てんだ。視線が変な方向向いてるってことしか分かんねぇ。

この2人は目立つ。
大勢の中でも見つけやすい。


まず、髪の色が変だし。

ホントよく三年間乗り切ったと思うんですけど。注意されても直さねーのは先輩達らしいけど。


それに同じテニス部の中でも、たくさん丸井先輩と仁王先輩とは特に関わってた気がする。



ノリが合うし、たまに弄られたりしてるうちに関わるようになってた。

弄られると俺は嫌がってますよオーラを出してたけど、そんなに嫌ではなかった。

髪の毛ネタ以外は。



でも、先輩達が卒業したらそれも無くなるんだなと、ふと思った。






あ、柳生先輩みっけ。

…え、泣いてんじゃん。
ちょっと早いよ先輩。まだ始まってそんなに時間経ってないじゃん。




お、ジャッカル先輩もいた。

ジャッカル先輩を見つけたのはちょうど卒業証書を受け取ってる時だった。


…照明が頭に当たって黒光りしてんだけど。

丸井先輩笑い堪えてるし、仁王先輩なんて携帯取り出して写メってんだけど。…あとで送ってもらお。





柳先輩もいた。

見つけたのはジャッカル先輩と同じく卒業証書を受け取ってる時。


制服姿が良く似合ってる。


あー…柳先輩にはお世話になりました。ダブルスとか、他にもいろいろ。

マジ憧れてたんスよ先輩。

なんつーか、かっこよかったんだよな柳先輩。

目が開いてるかわかんなかったけど。前見えてんかわかんねーですけど。


あと、データが怖かった。






真田副部長も発見。

校歌斉唱の時に見つけた。


顔を見つけたっつーより、声が聞こえる方を見たら居た、見たいな感じだけど。


相変わらず声がでかい。

部活の時、いつも発声練習してるんじゃねーかってぐらい叫んでたし、当然か。


…やっぱ、何回見てもオッサンが制服着てコスプレしてる様にしか見えねぇ。

これ言ったら絶対ビンタされるから言わねーけど。










同時に幸村部長も発見。

真田副部長とは違って、透き通るような綺麗な声。女子見てぇ。


部長には、いろいろ教えて貰った。


勝つことが全ての精神とか。
部長の在り方とか。
…負けた試合の大切さ、とか。



そう言えば俺、一回も部長に勝ってねーや。副部長や、柳先輩にだって。

三強を倒して、立海のトップになるはずだったんだけどな。


結局、三強には勝てずに終わっちまったし…。










そんな事を考えてたら、いつの間にか式は進み、今は在校生の贈る言葉になっていた。


まぁありきたりな台詞を個人、または全員で言って行くだけだけど。




隣の奴を見たら、泣いてた。

確か…サッカー部の奴だっけかな?同じクラスでそこそこ関わってはいたけど、まさかこんなに涙もろい奴だとは思わなかった。


やっぱ好きな先輩が居なくなんのは寂しいんだよな。




…俺も、きっと。



去年までなら卒業式なんて、めんどくせーからサボってたり寝てたりしてたのに、今年はちゃんと参加している。





それはきっと、先輩達が卒業しちまうから。







在校生の言葉も終わり、卒業式は終わりの言葉で閉められる。

卒業生、退場。と、司会の声が聞こえた。同時に退場の為の音楽が体育館に流れる。何だっけなこの曲。



曲が流れだしたら卒業生が出口へと向かいだす。

在校生は卒業生が歩いてくる道を、座って拍手しながら見つめる。誰かが泣いている声、うるさいほど聞こえてくんだけど。
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