転生したら神子さまと呼ばれています
□神子さまの仕事
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着替え終わったので、エリンにお願いして昨日怪我をした第一部隊の隊員たちの様子を見に行くことにした。もちろん扇も持っていく。これがあると呪いを払うのに便利だから。
「先に朝食を召し上がられては」
「あとでいいよ。アルバートみたいに熱を出してないか気になるんだ」
「かなめ様はお優しい」
アルバートは一番最初に呪いを払ったつもりだったけど、細かい呪いは残ってた。だから第一部隊のみんなも全快はしていないはず。
俺の想像は当たってた。大神殿の一階の治療部屋に行くと、隊員たちはみんなまだベッドに寝かされていた。喜んで俺を迎えてくれたけど全員に呪いが残っている。
「かなめ様、昨晩治療していただいたおかげでこのように動けます。呪術を受けたことが嘘のようです」
レイ隊長が笑顔で腕を動かして見せたけど、完治はしてない。
「ごめんね。まだ全快してないと思うんだ」
「とんでもない! あれほどの爆発でこれだけ軽傷でいられることが奇跡です」
みんな人がいいのか、そうだそうだと口々に言ってくれた。それどころか俺が無事で良かったと喜んでくれる。
「かなめ様、聖騎士のみなさんは元気そうなので先に朝食にしましょう。治療は後でも構わないでしょう」
「えっ、エリン?」
「もちろんです。かなめ様がこうしてお見舞いに来てくださっただけで……」
言いながら強面の隊長の目に涙が浮かぶ。よく見ると隊員たちも泣いてる。でかい男の人たちが低い声で泣いていると迫力があるな。今治療したらもっと泣きそうな気がする。正直なだめる自信がない。
「じ、じゃあ後でまた来ます」
隊員たちの迫力とエリンに負けて俺はそそくさと治療部屋をあとにした。
***
「か、かなめ様ーー!」
廊下を歩いていると、キリアン司祭さまが遠くから呼ぶ声が聞こえた。
「司祭さま?」
振り向くと司祭さまが一生懸命こっちに走ってくるのが見えた。同時に風をきる音がして、急に頭の上がぽんっと重くなった。何かいる。
「か、かなめ様! 頭の上に……こらっ、はやく降りないか!」
「な、何?」
呪術的な何かだと思うと怖いけど、おそるおそる手を伸ばすと、何か小さくてまるいものが頭に乗っていた。触るとあっさり手の中に移動する。
「ピィ」
それは昨日お餅みたいだと思ったガルーダの雛鳥だった。
***
「いやあ、助かりました。さすがはかなめ様です」
朝食の席でキリアン司祭さまが汗をふきふきこれまでの経緯を説明してくれた。ガルーダのヒナは今は俺の膝の上に乗って寝てる。ほんのりピンクと白い色で大福餅みたいだ。
「何度も外に放したのですが、すぐに戻って来まして。おそらくかなめ様を探していたのでしょう。昨日かなめ様に命を救われたことを覚えているのですな」
ガルーダのヒナは神殿の中をあちこち飛び回って結界を破ったり、神官たちをさんざん振り回したらしい。
「じゃあ俺が飼ってもいいかな?」
動物を飼うのは前世で俺がやりたかったことの一つだ。普通の鳥とは違うみたいだけど、神殿にはゼフィーみたいなグリフォンやジャターユもいるからそんなに難しいとも思えない。それに膝で眠っている雛鳥は可愛い。
「かなめ様がそう言われるのでしたら仕方ありませんな。私どももガルーダの生態を調べましょう」
「ありがとう! 司祭さま」
「ピイ」
「お前の名前、なんにしようかな。まるいから、やっぱりおもちかな」
「オモチ……意味は分かりませんが素敵な名前ですね」
「ピィ」
こうして手のひらサイズのガルーダのヒナ、おもちが俺の家族になった。