ポメラニアン魔王

□ポメラニアン魔王
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「着いたぞ、ポメ」

はっ…?ここは何処だ?
不覚にも眠っていたらしい。
これも魔力がないが故の醜態か。

しかしポメというのは何だ?
人間に運ばれていたらしい私は、腕の中で体を伸ばした。

目の前にはみすぼらしい小屋が建っている。
狭い庭には魔力の欠片もない木々が生えていたが、みな栄養不足に見えた。

「ちょっとボロいけど、大家さんがいい人でさ、動物飼ってもいいんだ。あ、もちろんポメの飼い主はちゃんと探してやるから」

「ヴー!」

この私に飼い主だと!?
私は魔族を統べる王だぞ。
人間風情が生意気な。

「よしよし。何怒ってるんだ?」

人間は私の怒りなどお構いなしに、みすぼらしい小屋へと入っていった。
この馬小屋より狭い空間が、この人間の住処らしい。

人間は私を粗末な板の上に下ろした。
何か魔力の足しになるものはないかと、その狭い部屋を回ってみるが、呆れるほど何も無かった。
唯一隣の部屋に、布を繋ぎ合わせた置物が設置されており、そこから微量の力を感じた。

フム、ここは良いな。
ここを私の定位置にしよう。

「ポメ、こたつに入りたいのか?」

こたつと言うのか。
勇者の剣といい、人間はろくに力も無いくせに、たまに恐ろしい物を作り出すな。

私はこたつに入り、顔を出して人間の行動を注視した。

人間はまず、皿に水を汲んで来た。
飲めという事らしい。
みすぼらしい皿だが、この人間はどうやら貧しい身分のようなので、豪華な物は期待できないだろう。
もう少し魔力が貯まれば、もっと金のある人間から魔力を奪う事にしよう。
仕方なく水を飲むと、今度はぐちゃぐちゃした形の食事を持ってきた。

これを食えと…。

おのれ勇者め。
そして人間め。
屈辱にうち震えながら、空腹に負けてその固形物を口に運ぶ。

美味…!

やるな人間め。

ちらりと男の顔を見れば、私の心が読めたかのように微笑み返してきた。
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