1week短編・番外編

□学芸会
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「松田君、準備出来た?」

クラスの女子が声をかけてくる。

「もう少し。でも間に合いそうだね」

微笑んでそう答えれば、僕に話しかけてきた女の子は少し赤くなった。


今日はクラスの学芸会の日だ。
体育館ではいろいろな出し物が催されていて、今は僕のクラスの劇が披露されている。

僕はクラス委員をしていることもあり、朝から忙しくてさっきまで職員室に行っていたのだけれど、僕の出番は最後なのでどうにか劇に間に合ったみたいだ。

紙で作った王冠をかぶり、段ボールで作った剣を身につけ、青い布をマント代わりに首に巻きつける。

「わあ、似合う・・本物みたい」
「ほんと!」
「さすが松田君ねー」

クラスの女子の歓声が耳に入る。

僕にはただのガラクタに見えるけど・・そこは小学生の言う事だからと軽くお礼を言って微笑む。
全然興味ない女の子にも優しくしてしまうのは僕の悪い癖だ。

「今、どこまで進んだの?」
「まだ敵の国と戦ってる所よ」

体育館のステージの袖に行くと、少しだけ舞台の様子が見えた。
舞台上ではバタバタと走りまわるクラスメイトが、段ボールの剣を振り回している。

白雪姫ってこんな話だったかな。

小学生の棒読みのセリフとめちゃくちゃなストーリーにしては、観客席も湧いていた。
笑い声がひっきりなしに上がる。

それはおそらく・・主役の力によるものだろう、と僕はステージ上の白雪姫を見た。
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