ちびドラゴンは王子様に恋をする

□成長
1ページ/11ページ

 卵から孵って半月が経った。その間に俺は少しだけ大きくなり、ヒースや自分についていろいろなことが分かってきた。

 ヒースの部屋の鏡で自分の姿を確認してみた所、俺は前世でイメージしていたドラゴンそのものの姿をしていた。体長は二十センチくらいだな。そして赤い。赤茶色? 羽というか翼の内側とお腹は少し色の薄い白っぽい色をしていた。目の色は緑。

「クェー」

 口を開けてもまだそんなに歯は揃っていない。全体的に尖った歯が多いな。

「ジェイソン、見てみて。カルが自分の姿に見惚れてる」
「面白いドラゴンですね。知能が高いというのは本当かもしれません」
「カルはドラゴンの中ではカッコいいのかな」
「もしかしたら鏡の中のドラゴンに向かって話しかけてるのかもしれませんね」
「そっか。カルには仲間がいないもんな。仲間だと思ってるのかも」

 お二人さん、悪いけど俺はそんな事思ってないんだよ。自分の姿と能力を把握している途中なんだ。

 振り向くと二人がニヤニヤしながら俺を見ていた。ジェイソンは渋いしヒースは相変わらず美人だ。それに比べて俺の姿ときたら……。チート能力以外に外見にも注文をつければ良かったよ。

「グァーアーア」

 なんとか言葉を話そうと思って口を開くけど、やっぱり発声はまだまだだな。

「アウアウア」

 発声練習をしているだけなのにヒースが爆笑してる。美人だけど笑う時はすごく子供みたいで可愛い顔になる。
 好きが爆発して突進すると、さっと避けられた。遊びだと思ってるらしい。そこで部屋中を追いかけっこして遊ぶ。どう考えても俺の方が小さくて足が短いからヒースに追いつけない。追いつきたくて必死に走ると、身体がふわっと浮いた。

「すごい! カル、飛べるんだな!」

 飛べる……?
 床から十センチくらいの場所をパタパタと移動しているだけのような気がするけど。そしてすぐに疲れて床にぱったりと倒れ込んだ。お腹がすいた。

「もしかして初めて飛んだのか? えらいえらい」

 ヒースが抱き上げてぐるぐる振りまわしてくれた。

「カル! 大きくなったら俺を乗せてよ。空を飛んでみたいんだ」
「キュイー」

 もっと飛行練習をして、ヒースを乗せて飛べるようになろう。ヒースだけを乗せるんだ。言葉を話せるようになって、そして恋人になれたらいいなぁ。竜と人じゃ無理なのかな……。

努力のかいも虚しく、俺の飛行はあまり上達しなかった。床上十センチの低空飛行だ。羽に比べて身体が重いからかな。ちょっと太り過ぎかな。
 最近はミルク以外にもおかゆみたいな穀物や果物とか、そんな物も食べてる。この建物に住んでいる人たちが俺を見かけるとみんなご飯をくれるから、寝る時間以外はずっと食べてる。明日からはもう少し動くようにしよう。
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ