1week

□L金曜日午後1時
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「二週間…!?」

ルーシェンと部下二人が話しているのを眺めながら、ぼんやりとケビンにもたれかかっていたら、ルーシェンの驚いた声が聞こえてきた。

「…はい。王子がいなくなってからちょうど二週間経ちます。最初は森で土蛇に襲われたと思い、土蛇を全滅させた後、森中を捜索いたしました」

土蛇ってあの変な生き物かな?
いたぞ。洞窟に。全滅してないぞ。

内心ツッコミを入れつつ、二週間という言葉に納得する。
確かルーシェン、一年近く村にいたって言ってたよな。
俺の携帯がおかしい訳じゃなくて、魔法村の時間がおかしかったんだ。
どういう仕組みか分からないけど、あれか?宇宙に行って帰ってきたらみんなじいさんになってた的な?竜宮城から帰ってきたらじいさんになった的な?
違うか。
脱出した後まで怖い魔法だな。
じいさんにならなくて良かった。

背の高い無表情の部下が淡々と告げていると、表情のくるくる変わる熱血部下が言葉を引きついだ。

「…でも王子が見つからなくて、緑水湖に落ちたんじゃないかって、湖の中を探したんです!でもやっぱり見つからなくて、今度は砂漠にいる盗賊に襲われたんじゃないかって…」

熱血部下が半泣きになったので、無表情が続けた。

「街道の街を封鎖して、大規模な盗賊の討伐を行いました」

なるほど。
街が封鎖されたのって、ルーシェンがいなくなったからなのか。
確か大物の盗賊が逃げたって話だったよな。さすがに王子が行方不明じゃまずかったんだろうな。

「盗賊は全員拘束しましたが、王子は見あたらず、途方に暮れていた次第です」

盗賊を全員拘束?
いたぞ。アニキが。砦にちゃっかりと。

「いったいどちらにいらっしゃったのですか?」

無表情部下がちらりと俺を見る。
いや、他の三人もちょいちょい俺を見ていたのには気づいてたけど。
まさか二週間の間、この一般庶民とイチャイチャしていたんじゃないですよね?という心の声が聞こえる気がする。
俺も被害者です、という顔で部下を見つめ返す。イチャイチャしてない…といえば嘘になるけど。

部下の視線がルーシェンに戻ると、ようやくルーシェンが口を開いた。

「封印魔法だ」

「…え!?」

部下全員が絶句する。
しばらくして無表情部下の「まさか…あの者達が?」という返事にルーシェンは頷いた。

なんだこの意味深な会話。
犯人は魔法使いの何とかっていう人じゃなかったのか?
よく分からないけど、これが王位継承争いのドロドロってやつか。

話が大きくなってきたから、やっぱり部外者は聞かない方がいいだろうな。

そう判断した俺は、立ち上がって会話に割って入った。

『それでは後は若い者同士、積もる話もあると思いますので、私はこの辺で失礼します。あ、そういえば王都はどこにありますか?』

今度はルーシェンが絶句してる。
部下の手前タメ口じゃまずいと思って、気をきかせてガイドブックの文章選んだのに、やっぱり王子相手だと失礼にあたるのか?
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