dream

□変態と恋愛
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「だめだ……好きかもしれない」






11月。

冬の臭いが幽かに感じ始める誰もいない屋上で、私は体を小さく丸めてコンクリートの地面に告白した。

好きとか嫌いとかはっきりした感情を持ちたくなかった。

トモダチ、というただそれだけの関係でいたかった。

苦しい思いをしたくなかった。

でも、幸せになりたい。

結局は自分が我儘になってしまう、嫌な女になってしまう。

そんな感情を運んでくる恋というものが嫌い。

「奴は、玲ちゃんと相思相愛なのに」

冷たい地面を人差し指で撫でてみる。

「あたしの入る隙間なんかないのに」

爪を立ててみる。

「奴のこと、全然知らないのに……」

ガリガリガリガリ……

「なんで好きになったんだろう……」

「△△、好きな人出来たんだ……?」

「そうだよって…え!?」

顔をあげると目の前に奴が…ヒロトがいた。

「盗み聞き!?このっ」

変態!といって逃げるつもりだった。

でも、ヒロトに腕をつかまれて逃げられない。

というより、触れられたところから麻酔を打たれたように力が入らずに地面にへたり込んでしまう。

「で、誰を好きになったの?」

まっすぐ私の目を見たヒロトは、いつものへらへらした顔ではなかった。

「どこから聞いてたの…」

「いいから質問に答えて」

「……なんで」

涙がぽろぽろ零れた。

「なんで、あたしのこと好きじゃないくせにあたしに構うの!」

止まらない。

「ヒロトなんか好きになりたくなかったのに!」

好きが止まらない。

「ヒロトに嫌な女だって思われたくないのに!!友達のままのが…幸せだったのに…っ」

彼が好きだから我儘になった。
彼が好きだから嫌われたくなかった。
彼が好きだから嫌な女になりたくなかった。
彼が好きだから、感情を殺そうとしていた。
トモダチのままがよかった、と。





「なに馬鹿なこと言ってるの」


「え?」

ネガティブな思考が止まる。

「友達のままじゃ、僕が報われない……」

低体温な彼のぬくもりと香りが私を包んだ。








変態と恋愛






‐‐‐‐‐‐‐‐
(好きだよ)


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