Novel
□甘い
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帝光中学の体育館
部活の終了時刻はとっくに過ぎているのに、体育館は明るいままだった。
「赤ち〜んオレ腹減ったんだけど〜」
「なら先に帰れとオレは言ったはずだが」
「それはダーメー」
「なら我慢して待っていろ。オレは今日のノルマをこなしてから帰る」
キリリとした目元が印象的な赤司は黙々とシュート練習をする。
それをつまらなそうにしゃがみながら見守るのは紫原。
赤司は今日、担任に呼び出しをされ部活に40分ほど遅れてきた。
その遅れた40分を取り戻そうと居残り練習をしている。
少し前までは黒子やら青峰やら黄瀬やら緑間やらも居たが、先にあがって行った。
で、体育館に赤司と紫原の二人きりに至る。
「赤ちんってば熱心すぎー。あーやだやだバスケにそんな力入れちゃって」
「オレは主将だからな。練習量が他の奴に劣るなんて示しがつかない」
「ふーん主将って大変だねぇ。ねぇじゃあもう帰ろうよ」
「何を聞いてたんだお前は。帰るなら一人で帰れ」
冷たく言い放つと赤司はボールを放った。
ゴールネットをくぐりバウンドしたボールを取ろうとした瞬間、横から大きな手が伸びボールをかっさらう。
「…………紫原」
「だってもーいいじゃん。そろそろ出ないと校門閉められちゃうし」
「……………あと三回シュートを投げる。それで終わりだ」
「だーめ」
「ボールを返せ」
「オレから取り返せたらねー」
紫原はボールを持ったまま腕を上げる。
ただでさえ巨体であるのに腕も長い紫原が腕を掲げたら、平均身長ほどの赤司にはなかなか届かない。はずなのだが。
「ナメられたものだな」
と赤司はジャンプする体勢に入る。
究極の負けず嫌い根性である。
そして足に力を込めジャンプしようとしたその時、
「なんつって〜」
「!」
ボールを放り投げ紫原が赤司をホールドした。
むぎゅむぎゅと赤司を抱き締める。