桜色


□始まりは突然に
1ページ/1ページ



  「うにゃぁぁぁあ!!」


名前の声(?)が部屋をこだまする。
それに驚いてか、最近、春歌に育ててほしいと頼まれたクップルが起きる。

「ど、どうかしましたかっ!?」
『ね、ねねね猫!!』

名前は言葉を話しているつもりなのに、口からは「にゃあ」という鳴き声しか聞こえない。
その上、さっきまで添い寝をしていたはずのクップルが消え、
アラビアンナイトに出てくる王子のような顔立ちの青年がいる。

「…手?ワタシ、人間に戻った…?」

青年は、自分の手を見ながら頭の上に?を浮かべる。

『え、何で男の人!?てか、何で私猫なの!?』

夢であってほしい。
名前はありがちな願いを込めて、頬をつね(られないので、足をかんでみ)る。

『………いひゃい』

目に涙を浮かべると、青年が目線を合わせてきた。

「…もしかして、あなたは…名前?」
「にゃあ!!」

肯定をしたはずなのに、口からでるのはこの一言。
情けない……

『…って、あんた誰!? クップルは!?』

名前は、分かりもしないのに青年に話しかける。
無意味な行動だと名前自身も肩を落とす。

「I'm sorry。申し遅れました。ワタシの名前は、愛島セシル。クップルは、私が呪いでかけられた姿です」
『え…言葉、分かるの?』
「Yes、my princess。アナタは春歌と同じ、ミューズを内に秘める者。アグナの歌を奏でられる者」
ミューズ? アグナ?
名前の分からない単語がポンポン出てくる。
混乱していると、セシルが名前をひょいと抱き上げる。

「にゃっ!?」
「ワタシが人に戻り、アナタが猫になったのは何か原因があるはずです。サタンの動きに何かあったのかもしれないです。
一刻も早く、春歌と合流しなければ!!」
『ま、待って!!』

名前が制止の声をあげると、セシルは止まる。

「…?」
『春歌は知ってるの?』
「前にも、似たようなことが起きました。
あの時は、サタンの影響で世界中の音が消えました」
『え!?そんなこと覚えてないよ!?』
「あの時は、何かによって時間が戻ってしまいました。恐らく、サタンの仕業です」

嘘……
名前はファンタジーすぎる現実に、放心状態になった。



[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ