桜色


□161と164
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「諦めなさい、苗字さん」

トキヤの顔が、だんだん名前の顔に近づく……

「だ、駄目だぁっ!!」

俺は思いきり名前を抱き寄せる。
トキヤは分かっていたかのように、ニヤリと笑った。…この確信犯め。

「………っ………」

名前が言葉を発した。
あまりにも声が小さすぎて分からない。

「え?今何て言った?」

俺が聞いても、名前は何も話さずうつむいた。
それを見たトキヤは、楽しそうに微笑む。

「翔、自分の手の場所、良く考えてください」
「ん?手……?」

俺は手を確認する。
左手は…腰、だな。
右手は…… ?
覚えのない感触。
俺は撫でてみたり、軽く掴んでみたりと、色々と手を動かした。

「ひゃっあっ…!!」

名前から、(一瞬だけだったけど)誘うような喘ぎ声が出た。
……もしかして…………

「うわ、翔、大胆だね。俺達がいるのにヤろうとするなんて。
そんなに抑えられなかったの?」

音也がニヤニヤしながら俺達を見る。
そう、身に覚えのない感触は、名前の胸だった。
その上、弄ぶように触ってしまった。
喘ぐのも間違いない…。

「わ、わりぃ!!」
「………っ!!」

名前は無言で自室に隠ってしまった。

「うわー、怒らせた」
「お前らのせいだろうがぁぁあ!!」
「それは違うぜ、おチビちゃん。オレたちは賭けをしていただけ」

賭け…?
俺がキョトンとしていると、音也が説明してくれた。

「名前と翔、どっちの身長が大きいか」
「ついでに、苗字さんが奪われそうになったときの翔の行動についてです」
「見事にイッチーの勝ちだな。全部当てたし」
「当然です」

事実を言うと、確かに俺の方が小さい。
俺は161で、名前は164だ。
だからといって…

「俺達で賭けをするな、馬鹿っ!!!」

俺は大声で叫ぶと、名前の元に向かった。

…許してくれたときは、涙が出そうだった。
土下座してまで謝ったからな…

**********

「まったく…トキヤには特にレッスン増やすか…」
「いや、もういいだろ?…事実だし」
「…?背が小さいこと?」
「………そうだよ!!」
「――私は、翔とキスしやすいから、このままでもいいな」

そういって、俺の鼻の先でリップ音を鳴らす。
…俺よりも男らしく感じた、だなんて、絶対に言わない。

==========

一応、年上彼女設定。
……オチよ、いずこに消えた…

那葵

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