桜色


□意地悪=愛?
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「さ、砂月、くん…」

相変わらず、俺に無防備に話しかけてくる名前。

「何だよ」
「あの…レコーディングルーム、とれたので…その…」
「…練習、するんだろ?」
「! は、はいっ!! ありがとうございます!!」
「別に…お前のためじゃない」

…名前に会ってから、俺は変わったみたいだ。
初めは、あの女みたいだから、
那月に近づけたくなかった。
でも今は…別の理由があるのかもしれない…
那月が名前に拒絶されてから、ずっと俺が表に出ている。
それからというもの、周りのヤツラは、
俺が恐ろしくて近づこうとしない。
あいつを除いては…

**********

「砂月くん、砂月くん」

練習のことの許可を頂いてから、
少しだけ聞きたいことが出来たので、聞いてみることにしました。

「何だよ。耳悪いわけじゃないから一度呼ばれればわかる」
「あ、ごめんなさい……」

怒られてしまいました…

「……何だよ。那月にでも用なのか?」
「えっと…」
「言っとくが、那月は出てこない。
お前が拒絶さえしなければ、こんなことにはならなかったんだ」
「あの、そうじゃなくて…砂月くんに聞きたいことが…」
「俺に?那月についてか?それなら分かってるじゃないか」

砂月くんは、何故かイライラしています。
何故なのでしょう…

「ううん、違います。砂月くんの事について…」
「俺の…?」
「はい。その…
砂月くんは、那月くんが外にいるときは何処に居たんですか?」

那月くんがそこにいるかもしれない…
それ以前に、那月くんが表にいるとき、
砂月くんは何処にいることになるんだろう…

「……闇だ」

砂月くんは、固く閉ざした口を開いてくれました。

「何もない、闇に居た。
外の声は滅多に届かない、奥底に」
「…………」

私は、自然と涙が出ていました。そんな酷いところにいただなんて…
ただ、それだけが頭にありました。

**********

名前は泣いていた。
声をあげる泣き方ではなく、涙を流すだけの泣き方。

「…同情なんて要らない」
「でも、そんなところにずっと一人で…」
「………那月の心配してやれよ。
俺がここに居るってことは、反対に那月が闇に居るってことなんだから」
「……私、那月くんにも砂月くんにも幸せになってほしいのに…」

………は?
那月だけじゃなくて、俺も…!?

「…お前は那月だけの心配をしてればいいんだ」

俺は捨て台詞を言って、その場を後にした。
胸のざわつきが治まらなかった。那月が嫉妬をしているのか、俺が揺らいでいるのか……
今は全くわからない。
それでも…俺の何かが変わった。
それを証明するには十分すぎた。

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