Long

□崩壊
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本日は賢神城全体の清掃日である。凛と広間の掃除をしている詠に臣が声をかけた。

「おい、詠。今資料届けに中央室に行ったらじいさん達から、お前を呼んで来いって言われたから」

中央室は賢神城の中でも最上階に設置されている、元老院が実務を行う場所だ。

「僕?なんだろう…?」

「多分大したことないんじゃないか?」

「でもあのじいさん達のことだからなぁ…」

詠にとって上からの呼び出しは今回が初めてだ。彼は緊張した面持ちで中央室へと歩を進めた。



「あまりこういうことは言いたくないんだがな…」

詠を呼び出しておきながら、元老院達はなかなか用件を口にしようとしない。

「あの…それで、僕に何の御用が…?」

「この子に行かせるのはどうなんだ?」

「仕方ない、もう決まったことだしな。手が空く者が他にいないだろうが」

元老院達はまじまじと詠を見つめる。そして何かを決めたようにそれぞれがうなずきあった。

「まぁ此度に限り何か起こるとも考えにくいし…大丈夫だろう」

「あの…お話の意味が、よくわからないのですが…」

見えない展開に首をかしげる詠に、用件についてやっと説明された。

「詠、お前に旧城跡の清掃に行って欲しい」

―旧城跡…?

臣が言っていたところだ。絶対に行くな、だけど理由は聞くな、と言われていたため気になってはいたのだ。しかし禁止事項のような気がして、旧城跡については触れられずにいた。

「臣さん達から言われました。行くなって。旧城跡には何か悪いものがあるのですか?」

「臣だと?あの馬鹿…余計なことを…」

「そ、そうだっ。詠、お前は一応新人だろう。あそこには奴隷を持たぬ者がたくさんいるのでな」

「それも聞きました。やはり僕って邪魔者なのかな…」

そう言って悲しそうな顔をする詠に元老院達は慌てる。

「い、いや、そうじゃない、詠。今回は本当に人手不足で旧城跡まで手が回らない。行ってくれるな?」

「元老院様方がおっしゃるなら、僕に断る権利はありませんけど…」

「助かるよ」

うまく丸め込まれてしまい、不安を抱きながらも詠は旧城跡へ向かった。



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