Long
□崩壊
1ページ/5ページ
本日は賢神城全体の清掃日である。凛と広間の掃除をしている詠に臣が声をかけた。
「おい、詠。今資料届けに中央室に行ったらじいさん達から、お前を呼んで来いって言われたから」
中央室は賢神城の中でも最上階に設置されている、元老院が実務を行う場所だ。
「僕?なんだろう…?」
「多分大したことないんじゃないか?」
「でもあのじいさん達のことだからなぁ…」
詠にとって上からの呼び出しは今回が初めてだ。彼は緊張した面持ちで中央室へと歩を進めた。
「あまりこういうことは言いたくないんだがな…」
詠を呼び出しておきながら、元老院達はなかなか用件を口にしようとしない。
「あの…それで、僕に何の御用が…?」
「この子に行かせるのはどうなんだ?」
「仕方ない、もう決まったことだしな。手が空く者が他にいないだろうが」
元老院達はまじまじと詠を見つめる。そして何かを決めたようにそれぞれがうなずきあった。
「まぁ此度に限り何か起こるとも考えにくいし…大丈夫だろう」
「あの…お話の意味が、よくわからないのですが…」
見えない展開に首をかしげる詠に、用件についてやっと説明された。
「詠、お前に旧城跡の清掃に行って欲しい」
―旧城跡…?
臣が言っていたところだ。絶対に行くな、だけど理由は聞くな、と言われていたため気になってはいたのだ。しかし禁止事項のような気がして、旧城跡については触れられずにいた。
「臣さん達から言われました。行くなって。旧城跡には何か悪いものがあるのですか?」
「臣だと?あの馬鹿…余計なことを…」
「そ、そうだっ。詠、お前は一応新人だろう。あそこには奴隷を持たぬ者がたくさんいるのでな」
「それも聞きました。やはり僕って邪魔者なのかな…」
そう言って悲しそうな顔をする詠に元老院達は慌てる。
「い、いや、そうじゃない、詠。今回は本当に人手不足で旧城跡まで手が回らない。行ってくれるな?」
「元老院様方がおっしゃるなら、僕に断る権利はありませんけど…」
「助かるよ」
うまく丸め込まれてしまい、不安を抱きながらも詠は旧城跡へ向かった。