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□大切な関係
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「お、きたきた」
「新人くん、おはよ」
朝、詠は由摩に朝食を取らせた後広間へと足を運んだ。彼が広間に入るとさっそく臣、凛、李鵜琵、寿の四人が駆け寄ってくる。
「もう、先輩達。僕ここ来て三ヶ月経つのに未だに新人っておかしいと思います!」
「いいじゃん、別に。なぁ?」
「そうそう。なんか後輩ができるなんてこと初めてだから気分が上がるんだよ」
―皆さん、優しい人達だなぁ
賢神城へ来て顔見せの儀が滞りなく終了した後、この四人や他に亜蘭、豪、そして緋那多が自分に声をかけ、余所者という隔たりをなくそうとしてくれた。
母国である緑弦の最難関と言われる学校を主席で卒業した自分に才能がないとは思わなかった。ただ、それを逆手にとられいじめにあったことがあったため、今回もそれをひどく心配していたが、そういうことも気にせずにいてくれたことが嬉しかった。
―何か皆さんのお役に立てないかな。
「ねえ、詠さん。由摩とはどう?馴染めてる?あの子、あんまり心開かないから大変でしょ?」
李鵜琵の問いに詠は苦笑いを浮かべ答える。
「うん、なかなか…やっぱまだ仲良くはなれてないみたい」
「そっか。まぁ、頑張って」
「ありがとう、李鵜琵くん」
彼とは特に親しくなった。奴隷格の者は皆自分に距離を置くのに対し、彼だけは初めからくだけて接してくれたため、気が楽だったからだ。
幸せそうに微笑んでいた詠に思い出したように臣が言った。
「あ、そうだ。お前に言っておかないといけないことがある」
臣の言葉に皆、緊張した表情を浮かべる。ただならぬ空気に詠もピンと背筋を伸ばした。
「旧城跡には絶対行くなよ。上から言われても断れ。いいな?」
「旧城跡?」
臣の発した"旧城跡"という言葉に首を傾げた詠に寿が口添える。
「賢神城の後ろ側に位置する廃棟のことですよ。あそこは奴隷を持たない調教師の皆さんがお住まいの場所ですから、それを刺激しては…ね?」
「寿の言う通りだ。まぁ、理由は聞くな。とにかく行くんじゃないぞ?」
「あ、はい…わかりましたけど…」
彼らの忠告に疑問を残したまま、詠はその日の任務のため広間を出ていった。