Long
□交錯する迷いと劣情…
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「最近姿鬼のとこの坊やは偉く馴染んできたようだけど…」
城の食堂で、臣と骸は姿鬼と緋那多の最近の様子について語り合っていた。
「それにしても…ちょっと馴染みすぎじゃねぇか?姿鬼の様子もなんか変な感じ…しねぇ?」
「…何が言いたいの?」
「いや、だからさあ…」
臣が言葉を濁し、それを境に二人とも黙り込んでしまった。やがて臣が口火を切り、骸に告げた。
「…悪いな、骸。俺折檻部屋に呼ばれてたんだったわ、元老院殿に」
臣は席を立ち、食堂の出口扉の方へと歩いていった。
「…全く。すぐに干渉するのは悪い癖だよ、臣。来たばっかのときは逆に無関心だったのにねぇ…」
臣の背中を見つめながら骸は、冷たい笑みを洩らして呟いた。
「…入るぞ?」
臣は折檻部屋の隣の部屋をノックした。返事がない。
―この部屋は姿鬼の自室で、緋那多の牢獄。
臣は最近この二人が気になり、部屋まで来てしまったのだ。
「来ちまったけど…これはさすがにまずいか?」
そう独り言を言いながらもう一度ノックしようとすると、扉が開き姿鬼本人が姿を現した。
「…なんだ貴様か。何の用だ?」
「い、いやぁ…用というほどのものでもないんだが…あ、そういや緋那多は?」
すると姿鬼は臣を訝しげに見つめた。
「緋那多に用があるのか?」
「用とかじゃなくて…顔が見たいなぁと」
それを聞いた姿鬼は少し戸惑いながらも臣に、中へ入るように促した。
―中へ入った臣は息を呑んだ。
「なんだよ…これ―」
そこにあったのは、全裸にされたまま身体に生々しい拷問の跡を残し壁に縛り付けられている、変わり果てた緋那多の姿だった。
「おい、姿鬼っ。奴隷は原則、室内では自由にさせると決まってるだろ!?違反じゃねぇかよ!」
臣は凄い剣幕で詰め寄ったが、姿鬼は涼しげにこういい放った。
「"原則"などという柵に囚われていなければならないという掟はなかろう。緋那多は俺の奴隷だ。奴をどう扱おうが俺の勝手にすぎん。部外者に口出しされる筋合いは皆無だ」
確かにそうだ。原則はあくまで原則。これに従わねばどうこうなるとか、そんな決まりはない。だがそうとはいえ、緋那多はれっきとした「奴隷」だ。それ以下の扱いを受けるべきではない、と臣は思った。
しかし臣とて自分が大事だ。この城で姿鬼に逆らい生きる勇気はない。もとより好いてはいなかったが、仕方がない。
臣は姿鬼を真っ直ぐに見据え、言った。