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□完全支配、そして…
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「―我が国の選ばれし諸君、これより定例会議を始める―」
元老院の長が宣言し、定例会議はいつものように幕を開けた。
ここは本会議室。賢神白の住人が皆集まり、近況の報告を行う場である。今回の提唱者は元老院本人だった。
「本日は例の赤軍の少年について諸君に報告すべき点がいくつかあったので、召集をかけさせてもらった」
元老院は続ける。
「現在の戦は今までで一番激しさを増すことが予想される。そこで我らは赤軍と手を組み、赤銘に古くから伝わる翁剣の力で周辺諸国を撃退しようと考えた」
「赤軍と?そう上手くいきますかな…」
異議を申し立てる者もいる中、元老院は策を説明し出す。
「あの少年だが、名を緋那多(ヒナタ)という。赤銘の力を借りるのと、彼らの保護が目的で今回あれをこちら側に連れてきたのだが…仲間を売れない、などと抜かして詳細を吐こうとせんのだ。別に何か赤銘に悪さをしようという訳ではないのだがな」
「あのガキにとっちゃウチも周辺国の連中もおんなじようなもんなんだろ」
臣は眠そうに返したが、元老院はそんな彼を無視して続ける。
「しかしこれでは埒があかん。我々は強行手段に出ることにした」
「それが、あの少年を姿鬼に渡すと、そういうことですか?」
「いかにも。なんとしてでも翁剣の所在を聞き出さねばならんのだ。だから姿鬼とあの子を契約させることにした」
「なるほどねぇ…しかしそれはあまりにも酷な仕打ちなのでは?かなり純真な子でしたし。あまり気が進みませんね」
凛が反対の意思を示した。それに続いて数人同じように反対者も出てきたが、
「これは総命令である」
元老院はきっぱりといい放ち、引き下がらせた。
「まあ、元老がそうおっしゃるなら…」
沈黙が落ちた中、豪(ゴウ)という調教師がおもむろに口を開いた。
「つかさあ、問題の姿鬼君はまだなわけ?」
そういえば、とばかりに皆姿鬼の姿を探すが見当たらない。すると元老院がやれやれと首を振った。
「それがだな…今日だけは遅れるなと言ってあったのだが、まだ来ておらんのだ」
元老院の言葉に豪はわざとらしいため息をついた。
「まったく…あいつの勝手気ままな猫っぷりは臣ちゃん並ですね。まぁ、まだ彼の方が役に立ちますけど」