Long

□ありふれた日常
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「おーっす…」

臣(シン)は隣のベッドに横になる李鵜琵(リュビ)に間の抜けた声をかけた。

「ああ、臣。おはよう」

眠そうに目を擦りながら、李鵜琵がゆっくりと起き上がる。

李鵜琵は、臣の奴隷である。
といっても赤銘出の奴隷とは違う。
李鵜琵は臣の奴隷に自ら願い出たのだ。


『臣、僕を君の性奴隷にして?』


見ず知らずの少年が自分の前につかつかと歩み寄り、開口一番こう申し出た。

開いた口がふさがらない、とはこのことか。

元より加虐心も自虐心も持ち合わさないのがこの臣という男だ。同時期にこの城に入った、凛というナイーブな友人に無理矢理連れてこられたのだ。

藍国出身ではない臣は、奴隷制度なんてものがこの世にまだ在ったということに驚きを隠せなかった。
人と関わることすら面倒でまともに仕事もしたことがなかった。仕事というのは奴隷の調教が主だったので、全くやる気がになれなかったのだ。

顔はかなりいい方だった。「臣様はお美しい」などとのたまい、奴隷になりたがる者も沢山いた。
しかし元老院達は不真面目な臣を認めず、調教を任すこともほとんどなかったため、長い間パートナーとなる奴隷が出来なかったのだ。

別に興味はなかった。―はずだった。

李鵜琵と名乗る少年に出会ったとき、自分の中に加虐の火が灯るのがわかった。この男を虐め落とし、自分に依存するくらい調教してやりたい。
心の底からそう思ったのだ。



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