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□序章
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6020年、第二十四次大洋海戦中の藍国

藍国は惨燕半島のほぼ真ん中に位置し、周りを囲む敵国と戦争をしていた。正確には巻き込まれていた、といった具合か。

この国は大昔から国民階級があり、国が二つの地域に分けられていた。

西の王国「黄安」。ここは豊かで和気藹々とした地域である。上流階級の人間が住まい、選ばれた者しか入れない神の領域と称されている。一家の平均収入が年間一億を超えるとされており、多くの資源に恵まれていた。

東の小地域「赤銘」。世に言うスラム街である。下級貧民、いわゆる「奴隷身分」の者達が肩を寄せあって暮らす、大変貧相で狭く汚れた地域とも呼べないような地域だ。

そしてもう1つ、藍国には王権よりも強い力をもつ絶対的な掟があった。その名は「赤軍民奴隷制度」。

赤銘は年の終わりに、その年に生まれた子供を本拠地「万象館」に集め、軍民と平民に分ける政が行われる。軍民とされた子供は10才になると戦争に駆り出され、挙げ句に隣接国である黄安の本拠地「賢神城」に奴隷として売られていくのだ。反対に平民とされた子供は、見向きもされずに赤銘の路上でひっそりと生きてゆくよりほかないのだ。

賢神城は上流階級者の中でも選び抜かれた少数の人間が住める、完璧な城であった。そこに住まう人間の大半が加虐的精神を持ったサドと呼ばれる者達で、赤銘の奴隷は専属の主人に調教を受け忠犬として一生主に仕えなくてはならない。

しかし中には心優しい者や人間味溢れる者もいた。

これは様々な情勢が交錯し合う争いの世にうずまく複雑な心情を持ち合わす、若き青年達の物語。



 

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