無題
□生徒会
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「はぁ?コイ?」
「う、うん。」
翌日の生徒会室。西木さんは部活の練習試合(助っ人)。柚木崎さんは体育館及び運動場等の使用許可を取りに。会長の霧ヶ峰さんは委員会会議。よって、室内には二年生二人組の岬と秋丘が書類をまとめていた。
「コイって…この学校には池なんてないで?」
「鯉じゃない!恋!ふざけないでよね!」
「いや、だって。秋丘がやろ?恋…。秋丘が恋か…。………………………………………………………。」
「私だって女の子なの!恋だってするわよ!」
呆れたのだろう。秋丘は仕事へと戻る。その横顔は少し恥ずかしそうに頬を染めている。照れているのだろうか。
にしても常に仕事に没頭し、見た目は可愛いのに多少…いや結構キツイ性格のせいで何人たりとも男を寄せ付けなかった秋丘が…恋…?
「…。」
「夜道に不審者に襲われ、バズーカで助けてもろうた…か。」
「…。」
にわかにも信じがたい。どこの少女漫画?と突っ込みたいが、いくら少女漫画でもバズーカで救済は無いだろう。それで恋に落ちるこいつもこいつだ。なんか…ズレてる。
「…。」
秋丘にも可愛らしい面もあるもんだ。バズーカで恋に落ちることを除けば。
「…。何よ。」
「え。あー。そうや。その彼ってのはこの学校に通ってるんやろ?どんな奴やったんや?」
「え!…………あんたに言っても仕方ないでしょ?」
「俺人脈広いから力なれる思うてんけど。知ってる奴かもしれんし。言う価値はあるやろ?」
「う…うん。えっと…」
詳しく思い出そうと秋丘は顔を歪ませる。
「身長はそんなに高くなくて、たぶん170前後。」
「うん」
「髪の色素は薄い方だったかな。暗かったからよくわなんないけど。金髪じゃないよ!?」
「うんうん。わかっとる」
「それで、自分のことより私のこと心配してくれて。」
「うん」
「感情は表にあまり出ないみたい。ちょっと不器用な感じがした。」
「うん」
「それで、」
「まだあるんか。」
「当たり前よ!あ。そうそう。犯人を腕にしまってた。きっと空間操作系の能力者なのね。」
「…うん?」
あかん。なんか俺の知っとる人な気がする。気のせいか。うん。気のせいやな。あいつは自分のことより他人のことやないもんな。どたらかというと他人を貶める方に全力を注いでる感があるもんな。そもそもこの時代、いやどの時代にもバズーカを持ち合わせている男子生徒というのがおかしい。そう、その時点で俺のボキャブラリーにそんな人物がいるわけがない。
心を落ち着かせようと、用意していたお茶を口に含む。
「そうそう!彼と一緒に居た人が、彼を『ユウ』って呼んでた!きっと彼の名前なのね」
「ぶふっ!」
吹き出しそうになったお茶をなんとか止める。資料に撒き散らしたら大惨事だ。
「ゆ…ユウか…。へぇー。そっかそっか。」
あかん!的中してもうた!よく考えたら…身長は170前後。細身に色素が薄い。空間操作系。バズーカは知らんが、もし使ってたら相手の心配を『ある程度』するのは当然や。
すべて当てはまる!
「岬?顔色悪いわよ?」
「何でもない何でもない!心当たりがあった訳や無い!」
「あったの!?」
しまったぁぁぁ!いや、この場合は何がしまったんだ?これでいいのか?
ってか中崎は何しとんのや!
「えっと…まぁな………。」
「ほんとに!?やった!もう会えないかと思ってたんだ!」
本当に嬉しそうに笑うな。喜べ中崎。お前に春が来たぞ。
その後、数時間にも及ぶ質問の嵐が岬を襲ったのは言うまでもない。